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2024年07月29日18:00

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「ザリガニの鳴くところ」

・ザリガニの鳴くところ(2018) 作:ディーリア・オーエンズ
作者は70歳の動物学者だ。ノンフィクションの著作はあるが、小説は本書がデビュー作だという。存在自体がネタみたいな本だが、読み応えのある力作で感心した。1969年、スポーツ選手の青年・チェイスが湿地で死んだ。事故か他殺か。1952年、父親の暴力が原因で、湿地に住む貧しい一家が崩壊する。取り残された幼い少女カイアは、一人で暮し始める。
過去と現在を交互に語りながら物語は進む。
DVの罪深さが心に沁みる。ヒロインの健気さと逞しさに声援を送りたくなる。学校に行けなかったカイアは文字も読めなかったが、自然が好きな少年・テイトの手解きで徐々に教養が身について行く。本作はまず何よりも少女の成長物語だ。彼女は自然から美しさだけでなく、残酷さも学ぶ。冒頭のチェイスの不審死事件に年代が近づくと不穏な空気が漂い始める。

ホワイト・トラッシュと呼ばれる貧乏白人は、単なる貧乏人ではなく出自や習慣を含めた全てが否定される。彼女に親切なのが黒人商店主というところが、いかにもありそうだ。レストランに入れるのは白人男性のみで、女性は屋外のテイクアウトを使わなければならない。有色人種はそれさえも使えない。生々しい差別の実態だ。
終盤はチェイス死亡の真相を探るミステリへと変貌する。最後まで気が抜けない。究極のサスペンスだ。
ミステリパートになってから自然とは無関係のようだが、最後に意外な伏線回収が待っていた。
最高点を差し上げよう。これがデビュー作とは信じられない。
★★★★★
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