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2023年09月30日23:15

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清張映画その1『張込み』

松本清張原作の松竹映画はけっこう見ているが、調べてみると見てないのが随分ある。「砂の器」とか「鬼畜」とか若い頃見たきりの作品を再見したい気もするのだが、まずは未見作品を網羅すべきだな。

『張込み』(58) 監督:野村芳太郎
清張作品の映画化には、長編を忠実に映像化するケースと短編を膨らませて映画に仕上げるケースがある。前者の代表が「砂の器」で、後者は「影の車」や「疑惑」などだ。本作は後者である。

ベテラン刑事(宮口精二)と若手(大木実)のコンビが旅館の二階で張り込みを続ける。強盗殺人事件の従犯が昔の女に会いに来ると睨んだのだ。女(高峰秀子)は年上の男の後妻に収まり、平凡な生活を送っている。とても他の男と関係しそうにない。諦めかけた頃、異変が起こる。
50年代の日本の風景に引き込まれる。満員特急の床に座って一晩を明かし、涼を取るには団扇とカチワリ氷しかない。不便で貧しかった。戻りたいとは思わないけど、懐かしい。
灰色の日常に滴り落ちた深紅の衝撃に、消えかけていた女の情熱が燃え上がる。鮮やかなコントラストだ。
終盤で一気に盛り上がるタイプの映画だが、前半も決して退屈ではない。二人の刑事の家庭環境を掘り下げて平穏だが幸福ではない女と対比させる。鮮やかな手並みである。ほろ苦い終幕も極上だった。★★★★★
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