吉村昭の未読作が本屋で平積みになっていたので、読んだ。
・天に遊ぶ(1999)
薄い本に21篇の掌編が収められている。いずれも原稿用紙十枚の短さ。タイトルの意味は、書いている間は天に遊ぶような心地だったから、だそうな。
長編取材中のエピソードなど、随筆に近い作品が多い。読みやすいのが取り柄だけど、短編を得意とする作家に比べると、淡白すぎて物足りない。何本かさすがと思われる作が含まれている。「香典袋」「読経」は人物の個性が印象に残る。「居間にて」や「鶴」は人生の黄昏の悲哀が胸に沁みる。★★★
・敵討(2001)
仇討ちがテーマの短編を二篇収録する。どちらも実在の事件というから驚く。
表題作は敵討ちの過酷さが痛いほど理解できる。逐電した敵を追うのは雲を掴むような話で、成功率は1パーセント未満だったという。本懐を遂げないうちは帰ることもできず、貧苦のうちに死ぬ者も多かったとか。本作の敵は鳥居耀三の配下となったため、政治的な事情が絡むので読み応えがある。
「最後の仇討ち」は明治時代に仇討ちが禁じられた事実に焦点を当てる。価値観が転倒した時期は、興味深い逸話が多い。
どちらも面白かった。やはりある程度の長さは必要だな。
★★★★
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