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2023年07月29日22:13

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坂口安吾と柴田錬三郎の短編集

旅行中に読んだ本をレビューしときます。

・桜の森の満開の下・白痴(1931-1952) 岩波文庫
作:坂口安吾
「桜の森の」がやっと読めた。意外と短い。映画はかなり内容を膨らませている。山賊が検非違使の手に落ちて使役される件は存在しない。映画もストーリーに変化があって面白かったけど、原作は男と女の話に焦点を絞った濃密な味わいで、別の良さがある。
「夜長姫と耳男」は、桜の森と同様の説話文学だ。彫刻師と姫様の話である。朴訥な男がわがまま女に振り回されるという筋立ては共通している。血生臭く、伝奇的な要素が強い。現代的に改変される前の原初的な民間伝承のような雰囲気が漂う。心引かれるものがある。

それ以外は新潮文庫との重複が多い。
「アンゴウ」は古書にちなんだ暗号の謎を解く。結末に意表を突かれた。
主流の作風から外れた作品のほうが好みだ。★★★★

・幽霊紳士/異常物語(1960-1961) 作:柴田錬三郎
何年も積ん読化していた。ちくま文庫の作品集を読んで存在を思いだし、一気に読んだ。やっぱり気になった本は買っておくべきだな。すぐに読まなくても、手元にあれば思い立った時に取りかかれる。

「幽霊紳士」は十二話から成る連作集だ。ミステリではあるが、本格のようで破格の要素が強いユニークなシリーズである。事件に決着がついてホッとした関係者の前に灰色の紳士が現れ、「間違ってるよ」と指摘し真相を語る。紳士はどう考えても超自然の存在だが、事件はあくまでも現実的でオカルト色はない。
偏見の愚かさを指摘する第二話「老優が自殺した」の真相に感心した。第三話「女子学生が賭をした」は鮮やかなコンゲーム小説だ。第五話「毒薬は二個残った」第十話「乞食の義足が狙われた」はトリッキーな展開が気持ちいい。レベルの高い連作集である。

「異常物語」八篇は単独の短編集だ。大昔の少年雑誌で読んだような嘘八百の歴史実話もどきである。
「生きていた独裁者」は、落ちぶれたヒトラーと売春婦になったエバ・ブラウンにパリで出会う与太話。
コナン・ドイルやヒッチコックなどの有名人が臆面もなく顔を出す。同工委曲のオチが多い。
「密室の狂女」は話が二つ入っており、陰惨な猟奇事件と裏歴史の二本立て。この短さでちゃんとストーリーを作れるのに驚く。表題作はもっと凄い。世界を放浪したと称する男が、奇怪な話を脈絡なく語る。

さすがに古めかしいが、面白い話の原点とも言える。作家を志す人は読むべきだ。★★★★
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