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2023年06月26日18:39

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岩下志麻その2『桜の森の満開の下』『疑惑』

・桜の森の満開の下(75) 監督:篠田正浩
桜が愛でられるようになったのは江戸時代からで、それ以前は不吉な花だった。満開の桜の下を通ると発狂する。これは平安時代の話である。

山賊(若山富三郎)が貴族の一行を襲い、美しい女(岩下志麻)を拐う。女房に収まった女はわがままの言い放題。凶悪な山賊は惚れた弱みでひたすら女に尽くす。
やがて女は生首を土産に欲しいと言い出した。

おぞましくも美しい幻想的な映画だ。生首でままごと遊びに興じる女は、この世のものならぬ鬼女か天女か。本作を支えているのは、岩下の凄みのある美貌だ。ある意味で人間離れのした容姿の彼女だから、幻想譚として成立する。平凡な容姿の女優が演じたら、悪趣味なVシネにしかならないだろう。若山富三郎の徐々に狂気を帯びていく演技も素晴らしい。陶酔し、引き込まれた。
★★★★★

・疑惑(82) 監督:野村芳太郎
原作は松本清張。相性抜群の名コンビだ。
埠頭からの転落事故で、男だけが死んだ。女(桃井かおり)は若い後妻で、夫は三億円の生命保険に加入していた。警察もマスコミも保険金殺人と決め付ける中で、国選弁護人に選ばれた女弁護士(岩下志麻)は無罪を主張して孤独な戦いを続ける。

濃厚な社会派ミステリーの傑作だ。小説の映画化として最も成功した例ではないか。原作も良い出来栄えだが、映画は二人の女の人生に肉付けすることで迫真の法廷ドラマを生み出した。弁護士は人情や正義感ではなく、仕事だからやると言うスタンスだ。真実を明らかにしたい。それだけ。対する容疑者は元ホステスで前科四犯、印象は真っ黒である。男を騙し、女を武器に生きてきた。彼女にはそういう生き方しかなかったのだ。

対照的な二人の女は裁判を勝ち取るパートナーのはずだが、心が通じ合うことは最後までない。岩下と桃井の火を吹くような演技合戦が見ものである。岩下も凄いが、桃井のだらしない悪女ぶりも強烈な印象を残す。

岩下志麻の20代から40代までの作品を一気に見て、改めて業績の大きさに感服した。彼女がいるおかげで、日本映画の豊穣さが何倍にもなったと思う。★★★★★
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