昨日紹介した二作を読んだ時には、バロウズ+武部本一郎のコンビは、日本の翻訳出版が生んだ最強のコンビだと確信した。このさき何百年海外エンタメが出版されようとも、武部イラストつきバロウズ作品を越えるものは現れないだろうと。今も基本的にはそう思っているが、確信がややぐらついている。さすがに二十冊以上も続いたシリーズでは、全部が傑作というわけにはいかない。
・ターザンと失われた帝国(29)
第13作。お調子者の子猿ンキマが同伴者として登場する。説明がないので、前作(ハヤカワ文庫に入っていない)でメンバーに加わったのだろうか。
本作の帝国とは、ローマ帝国のことだ。古代ローマがアフリカに存続しているというのは、通常の冒険小説なら立派な大ネタだが、なにしろアトランティスに王様ゴリラに有尾人が跋扈するターザン世界である。むしろ地味だ。考古学者エリッヒがこの地に迷い込み、ターザンが救出に赴く。ストーリーの緩急は見事で楽しめるが、際立ったシーンはない。★★★
・無敵王ターザン(31)
第15作。14作めは「地底世界のターザン」だ。武部イラスト入りの創元文庫で読んだ。
冒頭、各国から集まった共産主義者たちが悪だくみしている。黒人を煽動して支配者の白人を追い出そうというのだ。いかに悪そうに描いても、歯切れが悪い。なぜなら、彼らの主張自体は正しいからだ。「支配者を追い出せ、民衆の政治をやろう」「差別は許さん、平等にやれ」。
これを間違いと言える人はいないだろう。アメリカの赤狩りが凄絶だったのは、実は相手のほうが正しいということに気付いていたからだ。もっとも理想は崇高でも、現実に成功した国はひとつもないのですが。バロウズは「月シリーズ」でも反共描写を披露しているが、あちらは戯画化されていて笑って楽しめた。本書はなまじ現実的なだけに、せせこましくて興を削ぐ。
女神官ラーが四度目の登場。ネタに詰まったらこの子が出てくるのか。子猿ンキマはいいとして、黄金の獅子がまったくご都合主義に再登場する。で、一行の紅一点ロシア美女ゾラは、じつは反共主義者で、アメリカ人のコルトは米政府のスパイだった。はいはい、美人と英米人はイイヒトなのね。まだ全部読んでないが、たぶんシリーズ最駄作と思われる。★★
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