昨年買ったまま読みそびれていた本を発掘した。宮部みゆきはコンプリート継続作家のひとりだが、近年の大物「ソロモンの偽証」が今一つだったので、意欲が湧かなかったようだ。
・過ぎ去りし王国の城(2015)作:宮部みゆき
最近は不満足な作品もあるが、やはり宮部だけのことはある。読んでよかった。
中三の尾垣真は推薦入学が決まり、受験で大変なクラスメートを尻目に呑気な三学期を送っていた。そんなある日、銀行に展示されていた古城のスケッチになぜか惹きつけられる。実はその絵は異世界への扉だったのだ。クラスで浮いている美術部員の珠美に相談し、冒険が始まるのだが。
不思議で奇妙な冒険ではあるが、全然ときめかないし楽しくもない。暗くて沈んだ世界である。手探りで冒険のルールを確認しながら、世界の秘密を探る。非現実的な話なのに、ディテールを積み重ねてリアルな物語を作り上げていく。さすがの手並みである。「どこにも居場所がない」やるせなさが胸に迫る。「ここは俺の世界じゃない」と投げ出すのは簡単だが、そう都合よく英雄やお姫様として迎えてくれる異世界が転がっているわけではないのだ。
世界の種明かしは唖然とするほど意外だ。意表を突くという点では満点だが、あまりにも強引な。もともとファンタジー系の話だし、こういうのもありかな。
主人公たちがあくまでも前向きに事態に向き合うところは好感が持てる。宮部らしい結末も好きだ。★★★★
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