・邱飯店交遊録 (1983) 著:邱永漢
邱永漢が1954年から30年に渡って、友人たちを自宅に招いてご馳走した。筆者の小説や食エッセイはかなり読んでいる。本書は未読だったが、中公文庫で新装版が出たので読むことができた。
作家や編集者はもちろん、実業家や政治家まで交遊範囲の広さに驚かされる。ホンダやソニーの創業者など、私でさえ名前を知っている財界人もメンバーに入っている。高度成長期の成功者の話は景気がいい。アイデアと努力で巨万の富を築けた時代だ。
小説家では有馬頼義という人が、松本清張と並び立つ社会派推理の元祖だったらしい。名前も知らなかった。
メニューは個人の家庭で作れるとは思えない凝った料理から庶民的な品まで様々だ。第一回には十四品が並ぶ。さすが台湾の富裕層育ちだ。邱さんが筆頭格だが、昭和の文人は美食家を兼ねていることが多く、食エッセイを残している人も多い。今はこういう文化は滅びてしまった。邱さんは経済面の成功者だけに、当時の反米平和主義には批判的だ。「日本はアメリカの植民地だ」と言う人に、「あんたたちが存在出来ていることが、植民地でない証拠だ」と言い返す。確かに宗主国が植民地人に批判されて黙ってるわけないな。本物の植民地であった台湾で育った人に指摘されたら、納得するしかない。★★★★
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