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2025年03月23日14:54

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眠狂四郎『多情剣』と『無頼剣』

『眠狂四郎 多情剣』(66) 監督:井上昭
第7作。4作目の敵・菊姫(毛利郁子)が再登場する。菊姫の逆襲とサブタイトルをつけたいところだ。前回の能面を断ち割るシーンが回想されるが、使い回しではなく新撮だ。傷痕の位置が変わっていて、こちらのほうがいい。元は美人だったのがよくわかる。
シンプルでストレートな作劇だ。本シリーズは大抵プロットが凝っているので、やや物足りない。アクションはアイデア豊富で見応えがある。檻の中で槍ぶすまに襲われる。モブと思われたお洒落狂女(香山恵子)が豹変する。茶屋の女を水谷良重が演じる。
★★★

『眠狂四郎 無頼剣』(66) 監督:三隅研次
第8作。シリーズきっての異色作で、評価が難しい。象徴主義というのかアップを多用する独特の画面作りは、ヌーベルバーグとかの影響らしい。
ストーリーも一風変わっている。愛染(天知茂)と仲間たちは、大塩平八郎の弟子だった。大塩たちは越後で産出する臭水(くそうず)=原油を精製する方法を研究していたが、油商三浦屋に盗まれてしまった。書類と器具を奪回し、更なる復讐を企む。
芸人の勝美(藤村志保)は大塩の息子・角之介に想いを寄せていたが、面差しの似た狂四郎に惹かれていく。愛染一派は大塩を見捨てた幕府を憎んでおり、江戸を火の海にしようと目論む。こうなるとただのテロリストだ。

貧民救済という理想を掲げていたのに、どこで間違ったのか。高潔な同志が凶悪テロリストに変わる例は、いくらでもある。新撰組・水戸天狗党・ついでに連合赤軍。
いま見ると極めて政治的なテーマと言える。知的な悪人を演じさせては日本一の天知茂が、狂気のリーダーを熱演する。原作者柴田錬三郎が「これは狂四郎ではない」と激怒したそうだ。確かに狂四郎が絡むのが不自然に感じる。主役を愛染にして革命の理想と挫折を描けば、時代劇の歴史に名を残す傑作になっていたかもしれない。それでは企画が通らないか。
愛染は狂四郎の円月斬りを模倣したり、三浦屋の末娘(幼児)と遊んだり、他の悪党では想像もできない一面を見せる。ラストは狂四郎と屋根上で斬り結び、果てる。見事な悪役ぶりだった。
★★★★
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