・清張の迷宮
有栖川有栖と北村薫が選んだ松本清張の傑作選である。半分は読んでいたけど、一度も他の本に採られたことのないマイナー作が読めたのは有難い。職業作家が選んだだけあって、芸術家や学者の話が多い。
「装飾評伝」架空の画家の伝記だ。短いのに、生臭いほどリアルで迫力がある。
「断碑」考古学会の内紛が描かれる。利益を生みにくい文系学者は大変だ。学問の発展は重要なのだが。
「月」冴えない地誌学者の晩年に微かな希望が生まれるが。最後の一行の破壊力が凄まじい。本書の白眉だ。清張は社会派娯楽作家だが、文学者としても一流であることがわかる。
「理外の理」地味な物書きが切られそうになる。こういう市井の知識人は、今ならSNSで活躍できるのだが。本作も結末がショッキングだ。知識の象徴に物理的な意味を持たせるのは、深みのある趣向だ。
「天城越え」映画を先に見た。良く出来た話だ。
重複が多くても、上記の初読短編だけで最高点に値する。
★★★★★
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