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2023年06月15日22:08

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「仲代達矢が語る日本映画黄金時代」著:春日太一

もう一冊、春日太一の本。
・仲代達矢が語る日本映画黄金時代(2013) PHP新書
あまりにも出演作が多すぎ、役柄が多彩過ぎて有名な割にイメージしにくいのが仲代達矢という俳優だ。シリーズを持っていないせいか、高倉健の任侠・渥美清の寅さんのようにキャラクターとして語られることは、ほとんどない。その代わり時代を代表するような大作のほとんどに重要な役で出演している。こんな役者は他にいない。仲代の経歴を俯瞰するだけで戦後日本映画史をほぼ網羅できる。

出世作「人間の条件」を未見だったので、さっそく通販で申し込んだ。それ以外は取り上げられている作品のほとんどを見ているので、我ながら驚いた。黒澤明や五社英雄の有名作は言うに及ばず、岡本喜八の「殺人狂時代」について語ってくれたのが嬉しい。それにも増して小躍りしたのが、小林正樹監督の「切腹」を、「一本だけ選ぶならこの映画」と言ってくれたこと。五指に入るほど好きな時代劇だ。カンヌ映画祭で客席が騒然とし、失神する客がいる一方で大喝采を浴びたそうだ。グランプリをアラン・ドロン主演のイタリア映画に取られて全員で怒り狂ったエピソードなどは、今となっては微笑ましい。あの竹光切腹のシーンに負けないように、丹波哲郎との一騎打ちはことのほか気合いがはいったそうだ。だろうなあ。
唯一の不満は、坪島孝の「蟻地獄作戦」(64)に言及されていないこと。まあ仕方ないか。すべてを語ろうとすれば十倍の厚さが必要になるし。

黄金期の量産作品から、斜陽期の大作企画映画まで、俳優としての姿勢が一貫しているのが素晴らしい。映画史を語る貴重な文化資料である。こういう証言は記録しておかないと、後から復元できないからね。春日太一の熱意と力量は心から尊敬する。日本映画の話なら、この人に聞くべし。★★★★★

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