mixiユーザー(id:2615005)

2017年04月05日23:54

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クレメント二冊

読書日記の続きを。まず銀背のハル・クレメント。
・アイス・ワールド(53)
凍結した世界というのは、地球のことだ。主人公は摂氏500度の惑星出身で、硫黄の蒸気を呼吸している。探検隊ではなく、麻薬捜査官だ。地球で麻薬取引が行われているので、証拠をつかむため一味に潜入しているのだ。地球側の協力者はごく普通の人で、「ある品物」がそんなにタチが悪いとは気づいていない。
異星人の設定はユニークだが、例によってとても人間臭い。高熱異星人が宇宙旅行するのは大変だと思うが、残念ながら細かいディテールは書かれていない。地球人の少年が彼らと接触するくだりは少年小説ぽくて盛り上がる。佳作の域には達している。★★★

創元推理文庫のクレメント。
・窒素固定世界(80)
酸素が窒素と結合してしまった未来の地球が舞台だ。大気は酸化窒素で、海や川は希硝酸である。従来の生物は絶滅し、人間はごく少数がドームの中で生き延びている。

ドーム居住者<丘の住人>は窮屈なタブーに縛られている。ドーム社会から追い出されて交易で生活する<放浪者>は、窒素を呼吸する異星人「観察者」と友好関係にある。だが、狭量なドーム住人は異星人を侵略者と断定して捕えようとする。
ある種のディストピアなのだが、あまりにユニークな設定のため異世界SFに近い。異星人は観察して伝えることが本能であり、情報交換さえしておけば人格が複数あるわけで、個体の死には無頓着だ。この設定には感心した。従来のクレメントの長所(異様な環境と住民の科学的描写)はそのままに、短所(異星人があまりに人間的)が改善されていて、かなりの完成度である。プロットが引き締まっていて、楽しんで読めた。イラスト満載なのも嬉しい。

巻末に翻訳の小隅黎さんがSF大会で作者に会ったエピソードが紹介されていて、ありがたいオマケとなっている。★★★★

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