一か月前に神保町で入手したSF古本を前に舌なめずりしてます。銀背・金背は合計8冊。久野四郎「夢判断」はフライング気味に読んで、大阪に置いてきた。ターザンシリーズは7冊入手した。ぜんぶ武部先生のイラストだし、コンプリートしようか。あと8冊で全部揃う。面白くて読みやすいし、まずは今回の7冊を読破しよう。
反地球シリーズは、武部イラストの三巻まで買った。これ以降はイラストが加藤直之に交代するので、読まない。本国で十数冊でているが、邦訳は七冊のみでどうせ最後まで読めないし。武部イラスト目的に本を収集すると決めたら、困ったシリーズがある。退屈な「エストカープ」と劣化コピーの「ゾンガー」である。どちらも最初の一冊で充分なのだが、イラストがなあ。皮肉にもかなり質が高いんだよな。どちらもあと5冊くらいなので、揃えてしまうかな。
あとハリイ・ハリスン5冊とリバーワールド2冊、青背や創元などがいくらかある。じっくり崩していきます。で、本日は旅行中に読んだハヤカワ新SFシリーズから。ふつうに本屋で買った新刊だ。
・紙の動物園(2015)作:ケン・リュウ
作者は中国系アメリカ人だ。子供のころ移民した人なので、二世のテッド・チャンと違って中国文化が教養のコアとなっており、濃厚に作風に反映している。十五篇の短編は、きわめて質が高い。特に印象の強い作は、
表題作は、折り紙の動物が命を持つ幻想譚だ。もの悲しく切ない話だが、美しい詩情に打たれる。『もののあはれ』東洋的諦念と宇宙船という合いそうもない二つの要素が、不思議な感動を呼ぶ。
『月へ』『文字占い師』は、ファンタスティックな冒頭が政治の絡む生臭いドラマに変貌する。前者は現代の移民問題、後者は台湾の白色テロがテーマだ。後味が悪いが、これもまた中国系作家として避けられない題材だったのだろう。
『結縄』意表を突かれるアイデアに感嘆した。分子構造をこんなとらえ方するとは。
『選抜宇宙種族の本づくり習性』個人が登場しない。さまざまなエイリアンの製本を紹介するだけだ。知識の蓄積と伝承に書物は不可欠だから、どんな文化であっても本は存在する。なるほど。ユニークな異星人たちが楽しい。「コスミック・エンカウンター」を思い出した。
『心智五行』解説にあるように、往年のブラウンまたはシェクリイ+東洋文化という感じの掌編。SFらしい懐かしい楽しさに満ちた佳作だ。
『円弧』老いないことは幸福だろうか。不老不死を(ラザルス・ロングのような)個人ではなく、家庭と家系の問題としてとらえたところが斬新だ。『波』は宇宙時代の不死者を描く。申請しない限り死なないという状況は天国のようだが、よく考えると怖い気もする。
『良い狩りを』最も好きな作品。失業寸前の妖怪ハンターと追い詰められた最後の妖怪という救いのないカップル?の話だが、ストーリーが二転三転して予想もつかない結末を迎える。80年代黄金期の香港映画を思わせる。痛快にして爽やかだ。
SFと東洋文化の合体というのは、日本では豊田有恒が試みたことがあるが、さほど成功したとは思えない。本書は初めてではないにせよ、アジアンSFの極めて珍しい成功作と呼べるだろう。★★★★★
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