目と脳がちゃんと使えるあいだに海外SFを読破せねばならない身だが(別に頼まれたわけでもないが)、日本人作家も本屋で見つけると買ってしまう。レジェント大家と現役作家だ。
・風の視線(62)作:松本清張
プレミアムミステリ第四弾開始。まだあるのかよ。しんどいけど嬉しい。四期はあと三冊予定されている。ラオスを舞台にした作品があるようで、これがいちばん楽しみだ。
本作は恋愛サスペンスと銘打たれているが、要するに浮気と三角関係の話だ。文章の上手さに引っ張られて読んでしまうが、恋愛しかネタがないので物足りない。結末も取って付けたような感じ。やはり社会情勢と犯罪の絡む話が読みたいなあ。★★
・三鬼(2016)作:宮部みゆき
三島屋百物語の四冊目だ。おちかが様々な怪異譚を聞くという設定なので、ストーリーの自由度が広い。どんな土地のいかなる階級の話でも語れるのだ。本書にも商家・武家・農村など様々な舞台が登場する。怖かったり切なかったり笑えたり、味わいがすべて違う。作者の教養と力量にいまさらながら感心する。
『迷いの旅籠』は怪談のようなすべり出しだが、抒情的な幻想譚に発展する。終盤の映像的なイマジネーションは圧巻だ。愚かだが切ない願望が奇跡を生んだのか、すべては幻だったのか。明確な答えを用意しないところもいい。
『食客ひだる神』愉快で奇怪なグルメ怪談である。ユニークさでは群を抜く。ひだるさんの賛は、つまり三ツ星なんだね。作者のセンスに脱帽した。
打って変わって表題作は、貧困ゆえの悲劇が嫌というほど語られる。前半の事件はかなり陰惨だ。「感謝されてもいいのに、嘲笑される」なんて現代でもありそうだ。宮部さんは人の厭らしい心根を描くのが上手いなあ。山に登ってからの展開は息もつかせぬ迫力である。異様な舞台設定とサスペンスの盛り上がりは凄まじい。
『おくらさま』ある商家に伝わる奇妙な信仰が悲劇を生む。おちか自身にも転機が訪れるのか。
だるま屋の三色弁当ではないが、趣向が異なっている上にどれも旨い。極上の一冊だった。日本の映画界は漫画ばかり追いかけず、こういう作品を映像化してほしいものだ。★★★★★
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