本日深夜に帰国します。もう一本書いていこう。
・ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン(2016)作:ピーター・トライアス
各方面で評判の高い最新海外SFである。第二次大戦で枢軸側が勝利した未来、日本帝国に支配されたアメリカ西海岸が舞台だ。検閲局の石村紅攻大尉は、特高警察の槻野昭子の訪問を受ける。彼女は石村の以前の上官である六浦賀将軍の行方を追っているという。
日本に統治されたアメリカはディストピアではあるが、妙に楽しそうだ。電卓と呼ばれる個人用端末が普及していて、悪趣味な歓楽街にもグルメにも事欠かない。時代は架空の80年代だが、むしろ現代に近いような。日本がアメリカを占拠したら、こんな世界が出現していたのか。
国策としてゲームが作られていたりするのが、いかにもな架空日本だ。主人公たちが追う重要アイテムが、「アメリカが二次大戦に勝利した世界を描く」ゲームなのだ。
「疑われたら死」の監視社会は陰惨きわまりない。昭子の壊れっぷりは壮絶である。正義を確信している人殺しほどタチの悪いものはない。かといって単純に悪辣なわけではなく、主人公の二人にそれなりに背景と厚みがあるのが現代SFらしい。政府に対する反抗勢力も負けず劣らず残虐なのだ。いびつな世界でも視点が公正なので、不快感はない。
ゲーム勝負やロボット兵器の戦闘は、作者の日本オタク文化に対する造詣の深さがうかがわれて、胸が躍る。もうすこしロボットたちに活躍してほしかったな。
終盤のクライマックスは迫力満点だが、いまひとつモチベーションに欠けるのが惜しい。
オタク文化の洗礼を受けた韓国系アメリカ人がこういう力作をものしたのは、たいへん意義深いことだ。80〜90年代の日本には、「英米の翻訳小説こそが最上で、日本製アニメとゲームは最低」と喚き散らす狭量な自称SFマニアがいた。時の流れに負けて全員消えたけどね。本作を読ませてやりたいよ。★★★★
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