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2025年06月04日17:41

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『花まんま』映画と小説

わずかな日本滞在で見た映画の一本目。

『花まんま』監督:前田哲
兄妹二人だけで生きてきたが、妹(有村架純)には二十代で夭逝した女性の記憶があった。兄(鈴木亮平)はその事実を信じたくない。やがて妹の結婚式が間近に迫る。

原作は読んでいるが、内容を忘れていたのでちょうど良かった。幸福な庶民の日常に不穏な気配が漂う導入部は上手い。最初は妹が記憶障害を患う話かと思った。
主役の二人も周囲の人物も基本的には善人ばかりで、気持ちのいい作品だ。特に妹の婚約者が浮世離れした動物学者で、いい味だ。ツツジの花畠と花まんまの美しさが印象深い。少子化や孤独死の話題が多い昨今、誕生の素晴らしさに始まって幸福な結婚で締めくくるストーリーは、一周回って新鮮だった。強いて難点を挙げるなら、兄貴のスピーチが長過ぎてくどい。
良作でした。朱川湊人ファンとしては言いたいこともあるが、それは映画の価値とは関係ない。★★★★

・花まんま(文庫2008) 作:朱川湊人
作者の本はたぶん全部読んでいる。映画を見たあと17年ぶりに再読した。本書は六篇収録の短編集だ。表題作の内容を忘れていた理由がわかった。最も朱川らしくない。有り体に言って最も印象に残らない一編だ。50ページちょっとの短編を膨らませて良質な映画に仕上げた手腕には素直に拍手を送る。でも、朱川がこういう作家だと思われたら、「それは違う!」と声を大にしたい。

昭和の大阪を舞台にした不思議で不気味なホラーファンタジーである。この地で子供時代を過ごした人にとっては心に刺さりまくる。
「トカピの夜」は在日朝鮮人の少年との交流を描いた哀しく美しい物語だ。ラスト3行に心臓を鷲掴みされた。「妖精生物」は露店商から買った奇妙な生物とヒロインの性の目覚めがリンクする。昔は正体不明の露店がよくあったなあ。超自然の使者が混じっていたかもしれない。そう考えると楽しい。
「摩訶不思議」は遊び人のおじさんの葬儀と愛人たちのコメディ。暗い影はなく、お下劣で楽しい。
「送りん婆」重病患者を安らかに送る巫女?の話だ。高齢化社会にこそ必要な職だと思う。
「凍蝶」明言されていないが、主人公の少年は被差別部落出身者だ。孤独な少年と飛田で働く少女が束の間の交流を持つ。切なく甘酸っぱい逸品だ。冒頭に出てくる鉄橋人間のイメージも素晴らしい。
ううむ、やっぱり表題作が一番平凡だな。他の五篇は映画に出来そうにないけど。★★★★★
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