紙の解説書が無いと書いたけど、ありました。円盤に埋もれて見逃していた。薄いけど立派な解説だ。
『眠狂四郎 炎情剣』(65) 監督:三隅研次
第5作。狂四郎は吉原裏の浄閑寺で暮らしている。引き取り手のない女郎の無縁仏が並ぶ通称投げ込み寺だ。映画オリジナルの設定で、誠に相応しいと言えるだろう。
札差しの鳴海屋は、海賊の財宝を横領して財を成した。口封じに生き残った海賊の皆殺しを企む。鳴海屋と癒着した藩の重役・跡部が本作の敵だ。狩りたてられる海賊残党の悲哀と、金と権力に守られた悪玉の対比が鮮やかで、一段とシリアスな逸品である。
このシリーズは相手役の女優が豪華なのが特色で、ボンドガールならぬ狂四郎ガールと呼ばれていたらしい。
ぬい(中村玉緒)は、探索役を進めながら財宝を狙うしたたかな女だ。鳴海屋の囲い者・小笹(小桜純子)は乳房に赤子の刺青をしている。実物に二次元の赤子が吸い付く秀逸なデザインだ。小池一夫の劇画で見たことあるが、元ネタは本作らしい。海賊メンバーのおりょう(中原早苗)は手裏剣使いのボーイッシュな美人だ。このシリーズでは珍しいタイプで眼福である。彼女は後に深作欣二の妻となる。頭目の忘れ形見かよ(姿美千子)は自分の出自を知らない。狂四郎におにぎりを振る舞うのが愛らしい。
バタバタ斬るのは痛快だが、相手はゴロツキではなく、れっきとした藩士だ。問題にならないのかと心配していたら、最後に藩主がメタ的に処理する。「不正に関わった者は処刑した。他の者は病死だ。我が藩に浪人に不覚を取るような者はおらん」。権力中枢は何があっても自分だけは守るというビターな結末が大人の味だ。★★★★★
『眠狂四郎 魔性剣』(65) 監督:安田公義
第6作。狂四郎と仲のいい少年・鶴松は、職人の家で優しい姉・小糸(明星雅子)と共に暮らしていた。実は岩代藩主の庶子で、世継ぎが亡くなったため急遽必要になり藩士たちに拉致される。
子供を巡る騒動とは別に、無縁寺では黒ミサが行われていた。妊娠した大奥女中たちの中絶も引き受けている。原作にも黒ミサ(悪魔信仰)が出てくるが、そもそもキリスト教が違法な江戸時代に悪魔信仰というのが、よくわからん。無関係な二つの話を無理にくっつけたような。
本作も女優陣が華やかだ。「円月斬り」で倒した伴蔵の妹おりん(嵯峨三智子)が狂四郎を仇としてつけ狙う。他に毒蛇使いの女(長谷川待子)や尼に扮した殺し屋(若松和子)などセクシーバイオレンスに事欠かない。
チェンソーマンのデンジ君ではないが、「俺に近づく女は全員殺そうとするんだよ」状態だ。市川雷蔵の陰のある美貌が、実に良く似合っている。★★★★
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