読書日記が溜まってるので、忘れないうちに。
・火の杯(1952) 作:山本周五郎
戦後間もない時期に書かれた現代小説だ。著作リストで調べるとほぼ全部読んでいるのに、本作だけは古書でも買えなかった。角川文庫が新装版を出してくれた。
主人公・康彦は、大財閥・御池家の御曹司だが、本妻の子ではないため、幼少期から冷遇されてきた。本家は財閥解体に対応するため、分家を子会社として独立させる。康彦は事故で死んだことにされて、新しく作った戸籍を与えられた。もと運転手の娘・夏子と康彦の周囲を怪しげな男たちがうろつく。彼等が莫大な遺産の鍵を握っているらしい。
戦後の混乱期を舞台にした遺産争奪戦とは松本清張を思わせる設定だが、キャラ造形が悪い意味で劇画的で全体にチャチな感じ。こういう話なら主人公が欲まみれの亡者どもをギャフンと言わせることを期待したくなる。全然そうならない。主役がカネに興味ないのだ。それはないだろ。
戦後に軍上層部が、国民から搾り取った物資を私物化したのは醜い事実だが、本作では戦争中から汚職と横流しがあったことになっている。憎いのは解るが、言い過ぎではないかなあ。色々期待外れでした。★★
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