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2023年12月16日18:48

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「歌われなかった海賊へ」

・歌われなかった海賊へ 作:逢坂冬馬
「同志少女よ敵を射て」の作者だ。
現代のドイツ。歴史教師のクリスティアンは、町外れに住む偏屈な老人に会いに行く。鉄条網で囲った自作の碑には、こう記されていた。

歌われなかった海賊へ
歌わなかった市民より

老人に渡された記録は、大戦中にヒトラー・ユーゲントに反抗して結成された不良少年の組織「エーデルワイス海賊団」の活動と顛末を小説として描いたものだった。処刑された非国民の子ヴェルナーは、名士の息子ながら父に反発するレオンハルトに誘われて反ナチ的な意見を持つグループに参加する。町は鉄道の開通で賑わっているが、終点に何があるか誰も知らない。立ち入り禁止区域を越えた彼等が見たものはーー。

前作は戦争アクションの傑作だったが、今回はより深い政治と歴史の絡む闘争サスペンスだ。中身の濃さは本作が上だと思う。海賊団の活動ぶりは勇ましく痛ましい。少年たちに思想背景はない。共産主義でも自由主義でもない。単にナチが気に食わないというだけ。シンプルな潔さに好感が持てる。

敗戦間近の大人たちの右往左往する有り様は、醜いことこの上なし。同じ敗戦国民の日本人も他人事ではない。神国だ総玉砕だと煽っておいて、戦後は掌を返してアメリカに媚びへつらった連中が大量に存在した。
戦中も戦後も「善人」だった女性教師に対する糾弾は気の毒な気もするが、この種の「許さない」姿勢は重要だと思う。よくもデタラメ教えやがったな!

碑文の意味と鉄条網が必要だった理由は最後に明かされ、戦慄が走る。読み終わってから、もう一度序章を読み返すことをお勧めする。
衝撃的な問題作で、しかも面白い。★★★★★
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