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2023年10月29日14:28

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『顔』『球形の荒野』

松本清張の松竹映画つづきです。

『顔』(57) 監督:大曽根辰保
本作が最も古いようだ。もちろんモノクロである。
原作は、殺人犯が現場を目撃されてしまう。目撃者は犯人の顔を覚えていない。だが売れない役者だった犯人が映画に出たことで、目撃者の記憶が蘇ってしまうーーという皮肉な倒叙ミステリだ。切れ味鋭い秀作である。

このままでは映画にならないので、設定が山ほど盛られている。犯人は女(岡田茉莉子)で、腐れ縁の闇堕胎医を殺す。女は過去を隠してモデルとして成功するが、現場を見ていた男がいた。目撃者がいたことと犯人が華やかな世界で活躍することだけは似ているが、別物である。途中までは面白いが、ダラダラと長すぎて飽きてくる。駄作犯罪映画の例に漏れず、警察が間抜け過ぎ。
最後に取って付けたような社会派なセリフが入る。
「貧しい地方人が東京のネオンに引き寄せられた悲劇だ」。
違うっちゅうに。清張はこんな単純で幼稚な説教など書かない。スタッフが松本清張を理解していない。★★

『球形の荒野』(75) 監督:貞永方久
戦前の外交官・野上(芦田伸介)の娘・久美子(島田陽子)は、寺の記帳録に死んだはずの父の筆跡を発見する。父は生きているのか。なぜ姿を見せないのか。久美子は友人の新聞記者・添田(竹脇無我)と共に調査を開始する。背後には戦後日本の闇が広がっていた。

舞台は60年代に設定されている。敗戦国が抱える闇の深さに慄然とした。戦時中に中立国を通して和平交渉の道を探った外交官は、極右勢力にとっては非国民だ。それだけではなく、隠匿した財宝にも関わっているらしく、命を狙われる。重い題材だが、緊迫感みなぎる娯楽作として仕上がっている。ある意味で後味が悪いが、これはやむを得ない。本作の巨悪は、日本そのものだから。スッキリ解決したら、チャチなお伽噺になってしまう。ラストシーンは感動的だ。★★★★
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