振り返ると70年以前に書かれたSFはかなり読んでいる。90年以降も折に触れ目を通している。最も空白が大きいのは80年代である。実は食わず嫌いの作家が多いのだが、何冊も著書が訳されている人は、最低一冊は読むことにした。気に入ればファンになってもいいが、どうもこの時期の作品は大御所やソウヤーやヴァンスのように夢中にはなれない気がする。
前置きが長いなあ。ではこの人から。
・蝉の女王(88)作:ブルース・スターリング
サイバーパンクの旗手だったそうだ。前にも書いたが、サイバーパンクの定義がますますわからなくなってきた。本作にはヴァーチャル・リアリティは出てこない。接続や改造の話は出てくるけど。あ、接続がキーワードなのか。まあ定義なんかどうでもいいか。
人類は宇宙に進出するため、人体を改造した「工作者」とあくまで機械の力で難関に挑む「機械主義者」の二派にわかれて争う。異星人「投資者」は争いにつけこんで利益を狙う。
やたらとスケールが大きいのだが、小競り合いや商売の駆け引きみたいな話が多い。雄大なのかセコいのか、どっちだろう。突拍子もない設定はそれなりに感心するが、具体的なイメージが浮かばず実感しにくい。正直言って魅力は感じないな。なぜ本書が絶賛されたのか、理解に苦しむ。★★★
・焦熱期(74)作:ポール・アンダースン
定番作家のひとり。気に入った作も多いが外れもあるので、網羅的読破はしていない。本書は設定が面白そうだったので、読んでみた。
惑星イシュタルは、千年に一度恒星アヌに接近して焦熱地獄と化す。地球人調査隊は住民たちを助けようとするが、蛮族たちが統括領に攻め寄せてきた。さらに惑星の占有を主張するナクサ星人と地球政府の間に戦端が開かれる。
ユニークな天体の設定は、あまりストーリーにからまない。ナクサ星人との戦争も付け足し程度だ。眼目はイシュタル人同士の戦いである。イシュタル人はケンタウロスのように四足獣に人間の上半身が生えたような姿をしている。この種族ならではの戦法が描かれれば面白かったのだが、ふつうの中世チャンバラだ。とはいえ、戦術的な駆け引きは読みごたえがあるし、戦闘の迫力もかなりのものだ。冒険SFとしての完成度は高い。
決着のつけ方が、後味悪い。どう考えても他に方法はないのだが、いい気持ちはしない。日本人としては、どうしても広島・長崎を連想する。この人はもういいかな。★★★
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