・マン・プラス(76)作:フレデリック・ポール
かなり面白かった『異郷の旅人』としょーもない大衆SF『臆病者の未来』に続いて、ポールの作品は三冊目だ。本作をきっかけに安直エンタメ路線から本格的SF作家に脱皮したと言われている。
地球の人口が激増し、火星移民を実現するしかない。アメリカ当局は火星でも生きられるサイボーグを開発した。2号機として選ばれたロジャー・トラウェイの体験が、ドキュメンタリーのような生々しいタッチで描かれる。
戦力強化でも便利さ追及でもなく、「火星で生き延びる」ためだけに作られるサイボーグである。夢のかけらもない。ひたすら痛々しく、うすら寒い。それだけにリアルな迫力がある。
三人称小説なのに、時おり「われわれ」と称する人物たちがストーリーを語る。人類全体を指すのかと思ったら、終盤で驚かされる。サイボーグは一体作るのに莫大な予算がかかる。どう考えても人口問題の解決にはならない。真相を知れば、それも納得する。
古いテーマを現代科学の視点で追及した点は評価できるが、暗く不快な読後感はあまり好みに合わない。水木しげるが本作にインスパイアされた漫画を描いている。タイトルは忘れたが、かなり印象的な佳作だった。★★★
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