古めのSFを漁っていたので、日本作家の新刊を一年くらい放置していることがある。日本エンタメが読書の主流だったころは、買ったその日に読み終えていたものだが。部屋を整理していると何冊か発見したので、読んだ。
・雪炎(15)作:馳星周
北海道の道南市は、原発に依存する町だ。3.11で操業停止して以来、死んだようにさびれている。市長選挙に原発廃炉を旗印にする人権派弁護士が出馬する。もと公安警察の和泉は、頼まれて選挙を手伝うことになった。敵対陣営からの嫌がらせが続く中、選挙スタッフのひとりが殺される。
得意の暗黒絵巻だが、対立する陣営が二つだけなのでプロットは単調だ。
敵が保守政治家・ヤクザ・土建屋の絵に描いたような利権集団である。こいつらが別に共産主義者でもない弁護士を「アカ」とよぶところが、リアルで厭らしい。平和主義もリベラルも人権を訴える人も、自分の利権を妨害する相手はすべて「アカ」なのだ。便利な思考停止用語だなあ。頭の不自由な人にぴったりだから、ネットで乱発されてるんだろう。日本特有の誤用だ。赤狩りの本家・アメリカ人もびっくり。こういう例を見ると、「日本人は賢い」という俗説に疑問をおぼえる。
「日本の未來より今日の食い扶持」不況に沈む地方都市にとっては、原発は救いの神なのだ。嫌な現実だが、直視しなければならない。
主人公は貧乏くささが染みついてはいても、芯の一本通った男で、馳作品の主役にふさわしい。敵側のヤクザだが主人公と行動を共にする古沢も、人間的で味のあるキャラだ。周辺の脇役たちもそれぞれにユニークだ。読みやすく、どんどん読めてしまう。
娯楽作としてはこれで充分なのだが、テーマが原発だけに今一歩の踏み込みが欲しかった。長すぎて途中でダレるのも難点だ。★★★
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