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2025年03月29日22:52

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『炎上』

『炎上』(1958) 監督:市川崑
市川雷蔵の作品をもう少し見ようと思い立った。まず文芸作から。原作は三島由紀夫の「金閣寺」。
金閣寺からクレームがついて寺の名は架空のものとなっている。二枚目スターとして人気絶頂だった雷蔵に五分刈りの小僧を演じさせたのは、当時話題となった。

戦争中小さな寺の息子・溝口が、父と交流のあった名刹に弟子入りする。ひどい吃音のためコミュニケーションが苦手な溝口は兄弟子にいじめられながらも、真面目に雑務に励む。仏教大学に進学した溝口は足の不自由な戸刈と親しくなる。
陰気なコミュ障という二枚目要素ゼロの役が、意外にも似合っている。孤独な青年の心情が丁寧に描き出される。脳性麻痺?の戸刈を演じるのは、当時舞台俳優だった仲代達矢だ。捻れた性格は鬼気迫る思いだ。溝口に「お前、俺が相手なら付き合えると思ってるだろう」
というセリフがショッキングだ。多様性なんて概念は存在しない。二人は「かたわ者」である。最近のポリコレ映画の百倍も胸に迫るのは何故だろう。

戦後、GIたちに続いて日本人観光客が寺に押し掛け、素朴で優しかった住職も観光寺経営者に変貌せざるを得なくなる。溝口の心理を追う文芸作なので女優の出番は少ないが、戸刈と修羅場を演じる華道師匠に新珠三千代、溝口と会話だけする娼婦に中村玉緒が配され、貴重な彩りとなる。
最後に溝口は観光客に踏み荒らされる寺に放火し、自殺を試みる。極端な価値観ではあるが、ある意味では純粋だったのか。孤独な魂の記録として鮮烈である。★★★★★
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