『秦・始皇帝』(62) 監督:田中重雄
「釈迦」に続く歴史大作第二弾だ。脚本は前作と同じ八尋不二。勝新太郎が始皇帝を演じる。台湾に長期ロケを敢行し、大型セットも組まれているが、前作ほどのスケールは感じない。
エイセイ個人に焦点を当てているため、メロドラマじみてスケールが小さいのだ。冒頭の十分ほどで全国制覇を成し遂げ、あとは暴君ぶりが描かれる。どうしてもアニメ「キングダム」と比較してしまう。戦争場面は散漫な印象で、戦況がよくわからない。
ロウアイと大后のスキャンダル、リョフイが実の父であったり、燕国の刺客による暗殺未遂などの有名エピソードが映像化されていて、ドラマとしての見応えはある。
独裁者の評価は難しい。万里の長城が最も有名だ。悪名高い焚書坑儒は、仁義でなく法による統治を徹底したかったという弁護は出来なくもない。巡行に伴って全土の道路を整備し運河を掘らせたのは、当時の庶民にとって怨嗟の的となったが、後の世の流通に大いに役に立った。皇帝がその事を口にする場面はあるが、もう少し強調して史実を俯瞰する視点を提供すれば骨太の歴史絵巻に出来ただろう。傲慢で独善的な支配者という印象しか残らないのが惜しまれる。
刺客ケイカは若山富三郎、ライバル(という位置付けだ)の太子丹に宇津井健、儒生に川口浩という豪華キャストだ。女優では貴妃に山本富士子、孟姜女に若尾文子。
不満はあるが、中国史を大作映画化したのは大いに価値がある。★★★★
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