読書日記の続きです。二冊とも当たりで気分がいい。
・十月の旅人(74)作:レイ・ブラッドベリ
伊藤典夫さんが選りすぐった日本独自の短編集だ。当時は珍品を集めたありがたい本だったようだ。残念ながら、今となっては『十月のゲーム』『永遠と地球』『昼さがりの死』
の三篇が既読だった。どれも傑作なので、ちょっと残念だ。
もちろん目を見張るような作品はほかにもある。
『休日』火星コロニーから地球の花火を眺める話だ。花火はブラッドベリが愛着を持つモチーフのひとつだが、こんなに嫌な花火は他にない。たぶん物凄く綺麗なんだろうね。子供の最後のセリフに鳥肌が立つ。本書の白眉だ。
『ドゥーダッド』爆笑アイデアストーリーである。フレドリック・ブラウンみたいだ。
『すると岩が叫んだ』メキシコをドライブする夫婦がいる。この設定好きだなあ。じんわりと恐い。特殊な恐怖が存在するのではなく、周囲のすべてが恐怖なのだ。作者はリベラルで公正な視点の持ち主だ。それだけに一部のアメリカ人(白人限定)にひそかに怒りを感じていたのだろう。トランプに読ませてやりたい作品だ。ああ、あいつは字が読めないか(笑)。全部初読なら、文句なしに五つ星だった。★★★★
・柳生一族(86)作:松本清張
時代小説八編を収録している。どれも面白く、一気に読んだ。
表題作は柳生の年代記をさらっと追うだけだが、ノンフィクションを読むようなコクのある切れ味である。
『通訳』九代将軍家重は言語障害があって、何を言ってるのかわからない。「上様のお言葉」である。わからないでは済まない。通訳できる男の奮闘が笑える。しかし、頭も体も弱く、一人前に女と美食が好きって・・一般人ならクズもいいところだ。こんな男が日本一の権力者だったのか。だから世襲制や身分制度はダメなんだよ。
『蓆』主人公の侍は実に清張らしい小人物で、気持ちがよくわかる。茶壷の道中という習慣が興味深い。『五十四万石の嘘』悪ふざけが身を亡ぼす。悲喜劇ここに極まれり。
『疵』短いながら波乱万丈の時代劇だ。ストーリーの巧みさに感心する。
とても質の高い歴史・時代小説集だ。何を書いても上手い。★★★★
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