神林が「SFを理解したいなら、最低千冊は読め」というのを聞いて、懐かしかった。
どこで読んだかどんな文脈だったか忘れたけど、このセリフは二十代のころ聞いたことがある。たぶん作者と出典は同じだろう。それとも都市伝説めいた名言(雑言かも)として伝わっているのだろうか。最初に誰が言ったのか、気になる。
作家や編集者がいうとは思えないから、無名のマニアのセリフだろうね。SFはほかのジャンル小説より特殊で閉鎖的なせいか、マニア濃度を競い合うような傾向があった。その意味でいかにもSFファンらしい言い草だ。現在ならSF千冊は不可能ではない。年間百冊を十年続けるのは、さほど難しくはない。私もそろそろ越えているかもしれん。
でも不思議なのは、私がこの文章を見たのは70年代なのだ。SF界は今よりずっと活気があったが、出版点数は限られていた。ローダンがやっと三十冊くらい出ていたころだ。創元と早川をありったけ集めても、千に届かなかったのではないか。千を字義通りに捕えず、「ものすごく大量」と解釈すべきなのかな。
やっと読書力が回復した。
・ソフトウェア(82)作:ルーディ・ラッカー
コップ老人は人間に逆らうロボットを作ってしまったため、職を追われ隠居している。ある日自分にそっくりのロボットが訪ねてきた。かつてコップが発明したロボットたちは月で自己増殖している。この世に生んでくれたお礼に不死の肉体をプレゼントしたいと言うのだが。
もともと変な話の上に、ストーリーがあちこちに跳びまくる。ナンセンスなドタバタの裏に、生命や意識の意味を問う重いテーマが隠れている・・・のだろう、たぶん。ロボットの中にはちゃんと話せないのもいる。「こここに来いい」「警告をしてておきますす」。セリフだけで笑える。SFギミックも豊富だ。
こういう小説は好きなほうだ。でも、ちょっと読むのが遅すぎたな。80年代のぶっとびセンスも、今となっては精彩を欠く。スラップスティックSFなら、筒井康隆という大天才の作品を浴びるほど読んだあとだしねえ。本作は悪くない。時期を逸したのが残念だ。★★★
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