mixiユーザー(id:2615005)

2016年12月23日23:26

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『イルカの島』は面白かったが、余計なオマケが。

・イルカの島(63)作:アーサー・チャールズ・クラーク
名作の誉れ高いクラークのジュビナイルだ。読みたくて仕方なかったのに、アマゾン古書でも見つからず困っていたところ、再販された。創元社さん、ありがとう。

家出した孤児のジョニー少年は、停泊していた船に密航する。ところが船が沈没してしまった。九死に一生を得たジョニーがたどり着いたのは、グレートバリアリーフのイルカ島だった。そこではイルカの言語を研究し、人類の新たな仲間にしようとする壮大な実験が行われていた。

夢と希望に溢れた近未来SFだ。何が凄いと言って、スリリングで興奮に満ちているのに、他者を傷つける場面が一か所もないのだ。アクションはすべてサバイバルか好奇心による冒険か利他行為である。少年小説でもこんな上品な作品は珍しい。
時代はたぶん21世紀の半ばだ。「この30年はノーベル平和賞を与える人に困っているから、我々が久しぶりの候補になるかも」という科学者たちの冗談から推察して、世界中の紛争や差別は解消されているらしい。そういえばジョニーと地元民の少年スタッフ・ミックは、「偏見を持たない」という説明が不要なほど偏見がなく、あっという間に打ち解ける。親友になっても少年らしく、「俺のほうが上だってことをみせてやる」と張り合うあたりがナチュラルで微笑ましい。
現在の視点で眺めると、イルカにここまでの知能は無いと思われるが、そんなのは些細なことだ。

国同士の問題を解決して、次なる関心は宇宙か海洋に向かう。「甘すぎる夢だった」と笑うことは簡単だ。が、本作に描かれた理想は永遠に色あせない。間違っているのはクラーク先生ではなく、人類のほうなのだ。★★★★★

金子隆一という人が解説を書いている。この人はまったく興味の埒外だが、かすかに名前に聞き覚えがある。調べてみるとSF評論家とか科学ライターとか名乗っていたいかがわしい男だ。
本作の解説はろくにやらず、自分がジュビナイルSFで育ったことを自慢し、94年当時の日本SF周辺を嘆いてみせる。この男は典型的なオールドタイプSFオタクだ。
「英米は偉い、日本は劣っている」というのが唯一の理論である。理論とも呼べないが。
ウルトラマンやガンダムが大嫌いだったらしい。人の好みは自由だけど、自分の狭くて乏しい価値観を他人に押し付けるなよ。ウルトラマンがSFじゃないって?誰もウルトラにハードSFなんか求めてないよ。あれは痛快娯楽活劇で、かつ科学の味付けをしたお伽噺話なのだ。

当時の日本の状況を「黄金時代を縮小再生産していく」「不毛の世界」とおっしゃる。はい、そのまま最近のアメリカ活字SFに当てはまりますね。ダラダラ続く宇宙艦隊に西洋チャンバラ、東南アジアを舞台にした買春小説が受賞しまくる。不毛の荒野というしかない。
くだらない駄文のために、せっかくの爽やかな読後感が台無しだ。

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