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2020年06月25日08:05

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1404

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1404       

辻堂魁 「介錯人」               

時代小説家の辻堂魁は書下ろし文庫本のシリーズを
いくつか持っていて、安定した人気を誇っている。 
本書はハードカバーで4つの短編が収められている。

主人公の職業は罪人の打ち首という、江戸時代に
なくてはならない仕事ながら”不浄”の職と言われた。
この本業のほか、たまに武士の切腹の介錯も行う。 
不安定な職業のようだが、そうでもない。妻と娘、
母親、それに女中もかかえている。

この家業だが、若き主人公は三代目だ。創業の
祖父は浪人だったが、継いだ二代目は家業を
安定させ、そして三代目は天職として仕事を
一途にこなす。

彼が行う打ち首や介錯の相手には、そこに至る
さまざまな事情があり、その事情が読みどころと
なっている。江戸時代という封建社会、制約に
縛られた武家社会の中で懸命に生きる人たちが
描かれる。

その一方で、そのようなそれぞれの罪人の事情を
聞きながらも、仕事をこなす主人公のプロ魂が
すごい。彼は弱冠22歳なのである。彼が刀を
下ろすとき、打たれる側と打つ側との間には
厳粛な関係が生ずると言う。なかなか現代人には
容易に理解できないことだが、そんな真剣な
人間関係も読みどころとなっている。

けっして楽しい話ではないのだが、本筋を
縦糸とすれば、ほのぼのとした主人公一家の
様子である横糸がほどよいバランスを保っている。

本書は昨年の出版だが、好評だったのだろう、
最近続編も出た。

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