「妖怪・特撮映画祭」での上映の「怪談雪女郎」観て来ました。
小さい頃にテレビで一度観たきりの作品でしたので、再見できたこと、それもスクリーンでの再見となったことが嬉しくてなりません。
しかもこれ、大変な傑作なんですよね。
思えば小泉八雲の「怪談」にある「雪女」の話って、すごく理不尽。雪に行く手を阻まれてやむなく小屋泊まりした人を理由もなく殺しちゃうし、殺さずに生かしておいた若者に「このことは決して誰にも言ってはならぬ」と言いながら、後になって誘導尋問でしゃべらせちゃうし。
ところがこの作品では、観ていても「そりゃないだろう」と思わせないような運びになっています。
例えば、雪女がただ「人を殺す」だけの恐ろしい魔物でなく、「命を奪いもすれば与えもする」という、まるで「もののけ姫」のシシ神のような存在として描いているところ。人としての幸福を知った雪女=ゆきが守護職・美濃守の子供が危篤状態であるのを、己の命を削って救うあたりに、彼女の「雪の精」としての優しさが垣間見えます。
また、夫の与作がつい「雪女に出会った記憶」を語るのも、村の巫女がゆきの正体を見破ってしまい、それに抗った彼女が心ならずも「雪女」の本性を目に現わしてしまったがためにそういう流れになってしまった、という形になっているんですね。
作品自体がなんだか雪女の心情に寄り添うような視線で描かれている、とでも言えばいいでしょうか。
それだからこそ、自らの正体を明かし、愛する子供を置いて山へ去って行く彼女の哀れさが胸に迫るのです。
それにしても、雪女を演じる藤村志保の何と素晴らしいこと!
彼女の芝居の見事さ、立ち振る舞いの美しさや優しい声(そして恐ろしげな声)を、この作品ほど堪能できるものはないんじゃないですかね。
未見の方にはむりやり機会を作ってでも観ていただきたい逸品です。プログラム・ピクチャーの枠を越えた、正真正銘の傑作ですよ。
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