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2015年01月24日18:06

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ジャッジ 裁かれる判事

 ほとんど話題になることなく、ひっそりと公開されて消えていく洋画の、最近はなんと多いことか。
 おそらく本作もその一つとなるでしょうが、映画好きならばこれは見逃すと損だと思います。

 都会でやり手の弁護士として鳴らす息子・ハンクと、地方都市で判事を長く続けている、誠実だが頑迷な父・ジョゼフ。長く疎遠だった父子が、父の殺人疑惑という事件をきっかけに次第に歩み寄っていく物語。
 裁判劇としても大変見応えがありますが、家族劇としても優れている上、フランク・キャプラの名作「素晴らしき哉、人生!」のようなスモールタウンものとしても味わいの深い、素晴らしい作品でした。

 かつて将来を嘱望された長男グレン、反抗的なワルガキの次男ハンク、知的障害があり、古い8mmカメラが大好きな三男デールという三兄弟のキャラクター分けを見ると、ああ、どこの国でも次男坊ってちょっとヒネた存在として認識されてるんだなあ、とおかしくなりました。私もそうでしたから。
 もっとも、バカな私はハンクのように一度も奮起することなく、無為に年齢を重ねてしまいましたが。

 本作は裁判映画でもあるので、法廷における様々なエピソードが描かれます。
 この中で興味深かったのが、陪審員選出の件り。
 「陪審員に適しているのはどんな人です? 公正で良識のある人ですか?」と問われたハンクの答えがケッサク。曰く、

 「丸め込みやすいヤツらさ。雪男の存在や、『月面着陸はでっち上げ』なんてヨタ話を信じ込みやすい連中だよ」

 ・・・なるほど。そんな連中なら、ツィッターとかをのぞいていればゴロゴロいますよね。

 ジョゼフはかつて、ある男を殺人罪で有罪にし、20年の懲役を言い渡しました。
 その男は、出所して間もなく轢き逃げに遭って死亡。その嫌疑がかかったのはジョゼフでした。彼の車に男の血痕が付着していたのです。
 ところがジョゼフは「記憶がない」の一点張り。予審のために雇った弁護士はとんだ新米の役立たず(審理が始まるたびにゲロを吐いてしまう!)。仕方なくハンクは自ら弁護を買って出るのですが、そこで彼が直面したのは、「人が人を裁く『裁判』とはいったい何なのか」という根源的な命題でした。

 結末は詳しく書けませんが、ここで私たちはハンクと同様に「判事といえど、人間である。判断を間違えることもあれば、私情に動かされることもある」ということを思い知らされます。
 しかしながらそれは、裁判を否定する、ということではありません。むしろ「だからこそ裁判制度には意義がある」という作り手の思いが込められているように感じます。

 法とは何か。法を執行するというのは如何なる責任を伴うか。法によって真に守られるべきものは何か。
 そのことを見る者に考えさせずにはおかない、秀作でした。

 
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