mixiユーザー(id:1280689)

2014年11月29日19:41

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フューリー

 戦場における「必死さ」を極めて雄弁に描いた秀作でした。

 本作では「圧倒的優勢の連合軍」や「敗戦間近で疲弊したドイツ軍」というありきたりの描写が意図的に排除されています。戦況がどうあれ、直接命のやり取りをする戦場では、敵味方等しく必死に戦わなければならないからです。
 生き残るために。生きて家族に再び会うために。

 主人公・コリアー軍曹の部隊がある街でドイツ軍と交戦します。
 その街に至る道のそこかしこに、縛り首にされた少年少女の死体がぶら下がっています。彼らは連合軍と戦うことを拒否し、SS将校に殺されたのです。
 当然、コリアー達は激しい憤りを感じます。しかし、そのSS将校は本当に非道なのでしょうか? おそらく彼も与えられた任務を遂行することに、そして祖国を守るために必死だったのでしょう。徹底抗戦して連合軍を撃退するために、逼迫した事態を非戦闘員に思い知らせるために、「必要な処置」として処刑を行ったのでしょう。
 それを責めることが、果たしてできるのでしょうか?

 それにコリアー達は、それ以前の戦闘で、無抵抗の捕虜を殺しています。新入りのノーマンと言う兵士に「戦場」というものを教えるために。
 これは、かつての日本軍が新兵教育と称して中国人捕虜を「生きた標的」にし、銃剣刺突訓練をさせたのと同じ行為です。明らかにこれは戦争犯罪です。
 でも、私たちはこの行為さえも責めることができないでしょう。

 兵士達にとっては生き残ることが全てなのです。一人でも多く敵を殺して生き残って勝利を得て、国に還ること。それだけが。
 だから手段など選んではいられません。考える前に殺せ。躊躇したら殺される。

 それが、それこそが戦争の本質なのだ、と本作は訴えます。恨みつらみもなければ一面識もない者同士が、国が戦争を起こしたから、というだけで殺し合う。この理不尽に目を向けずして平和への努力などあり得るでしょうか。

 「どっかで戦争でも起こってくれないかな」「いっそ戦争でも起これば多少は景気も良くなるのにな」「国のために戦って死ぬことは苦役ではありませんよ、国民の皆さん」、こんなことを考えている鬼畜たちにこそ、本作を観てほしいと思います。
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