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2019年04月11日22:06

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安彦良和『神武』

 安彦良和『古事記巻之二 神武』(中公文庫、1997年)を読了。原田常治の説に基づき、国譲りから神武東征までの神話を歴史化している。『ナムジ』の続編に当たってもおり、そちらで登場した人物の行く末も描かれているので、両書を通読した方が面白い。
 主人公は前作の主役であったナムジの息子ツノミで、賀茂氏の始祖たる八咫烏に当たる。出雲と邪馬台国の戦争に巻き込まれたツノミは、その渦中で後の神武天皇であるイワレヒコと出会い、彼に忠誠を誓う。イワレヒコは可憐な少女のごときチャイナ服のショタで、体は弱いけれども意志の強さと純粋な優しさを持っており、多くの男女をメロメロにしている。
 そのようなイワレヒコの東征とは大和への婿入りで、敵対勢力に悩まされながらも山岳民の助けを借り、険しい山道を健気に進む。そこには民衆と共に歩んで平和的な共存を願う現代的な君主像が投影されており、他方で恋闕の対象という伝統的な天皇観も感じられる。なお、著者は神武に続く欠史八代を歴史に残すほどの動乱がない「神武の平和」であったと解釈する。
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