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2024年10月31日13:29

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「塩田千春 つながる私(アイ)」(中之島美術館)

塩田千春さんの大規模な展覧会が大阪で開催。
中之島美術館だけの開催なので、大阪まで行ってきました。
4年前、コロナの直前に、彼女の故郷・岸和田で小規模な作品展覧会が開かれたことがあり、ご本人も出席。そのときも、当時住んでいた豊中市から岸和田まで見に行ったのです。

10月29日は小雨模様。御堂筋線淀屋橋駅を降り、土佐堀川沿いを歩く。大阪を離れてるうちに、淀屋橋駅そばに、御堂筋を挟んで大きなビル2棟の建設が新たに始まっている。
ちょっと歩き疲れて、観覧の前に、かつて国際美術館や中之島美術館に行ったときによく立ち寄ってた喫茶店で休憩。大阪の真ん中なのにいまだコーヒー450円なのが嬉しい。

さて、展覧会。
入場するとまず、天井からの長い長い赤い糸と、まっ赤なドレスを融合した作品に圧倒される。
見学者の通路の頭上には長い糸はないのだが、長い糸が自分に迫ってくるような錯覚を覚え、こわごわ歩く感じだ。

館内には、巨大な水槽と、その上に白い糸で張り巡らされた作品が。
そして、糸からは絶えず水滴が垂れ、水槽に中に静かな水音が響く。
白い糸だけに、まるでクモの巣のような光景にも見えるし、塩田作品おなじみの、びっしりと張り巡らされた糸の迫力が圧巻。

次の部屋では大きなスクリーンで、塩田氏のインタビュー映像が上映されていた。
子どもの頃の思い出から、現在のようなインスタレーションを生み出すまでの苦労や過程が率直な言葉で語られ、見入ってしまう。

塩田氏は近所に絵画教室ができたので、10歳ぐらいから通い始める。
その頃描いた花の絵。小学生なのに、色の使い方が独特で面白い。
12歳の時に「将来は画家になろう」と決心したという。

美大の絵画科に入学するが、表現方法で行き詰まり、試行錯誤。
オーストラリアの大学やドイツへの留学で表現を模索、現代美術家の村岡三郎氏に師事したことも、彼女に大きな影響を与えた。
生と死、戦争などをテーマに表現する村岡氏の作品から、塩田氏も、生きること、それを表現していくことの意味を考える。

絵画ではなく、パフォーマンスで、からだにまっ赤なエナメルを塗ったり、穴倉の中に裸で入ってみたり。
制作拠点を、壁崩壊後のドイツに移し、バスタブの中で泥をかぶるパフォーマンス映像をつくったりもする。
そして、塩田氏の代表作品となる、「糸」を用いたアート作品が生まれだす。

使い道のなくなった多くの鍵が無数の糸でぶら下げられていたり、多くの靴を糸でつないだり。裾の長いドレスをぶら下げたり、燃やされたピアノを展示したり。
幼少時、近所で火事があり、そのとき焼け残った家具が出されていた記憶に基づくのだという。
また、ドイツでは蚤の市をめぐり、不用品として売られていた、1930年代の手帖や日記も、作品のアイテムとして使う。
改装中のビルの窓枠が取り外され、それを集積して、うずたかくなっているのも、見入ってしまう光景だ。

塩田氏は30代、40代でガン闘病を経験し、みごもった子どもを流産するなど、辛い経験もする。
それらはすべて彼女の作品表現に繋がった。

大阪展での制作の様子も少し映し出されていたが、糸を張り巡らせるため、高いところまで登り、多くの人と協力しながら、手作業で紡いでいく。
気が遠くなるような過程だが、「糸」にこだわるのは、他者と結びつくもの、人と人とをつなぐもの、の象徴だからという。

岸和田で見たときは、市の小さなホールだったが、今回は、天井も高い、奥行きのある美術館であることもあり、より作品が大胆でダイナミックになっている。

くるくるとまわる、丈の長いドレス、家の形の枠組みに張り巡らされた赤い糸。
そして、展示室いっぱいの、垂れ下がり、結び合い、張り巡らされ、白い紙を空中に押しとどめている糸。

とにかく、スケールの大きさに圧倒されっぱなしになる展覧会だった。
平日なのに観覧者が多く、外国人も多く見かけたのは、塩田氏の知名度かもしれない。

わたしは読んでいないのだが、やはりドイツ在住の作家・多和田葉子氏が読売新聞で小説を連載しており、挿絵担当は塩田氏とのこと。どちらも国際的なクリエイター、なんとも豪華な組み合わせである。
その挿絵の原画も展示。ドローイングもまた、塩田氏の別の魅力である。

※2020年、岸和田の展覧会の様子
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1974570070&owner_id=5348548

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