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2024年05月23日18:26

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心が壊れる前に ( 映画『ミッシング』)

とつぜん行方不明になった愛娘を取り戻そうと、母親の沙緒里と父親の豊は懸命の捜索活動をするが虚しく3カ月が過ぎる。
沙緒里は自制気味の夫に対する苛立ちから諍いが絶えず、唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者、砂田を頼る日々。
そんな中、沙織里が娘の失踪時にアイドルのライブに行っていたことが知られ、ネット上で育児放棄だと誹謗中傷の標的になってしまう。世間の好奇の目にさらされ続けたことで沙織里の行動や言動は次第に神経質になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じるように。
砂田も沙緒里も、失踪事件に対する世間の関心が日々薄れていうことに焦りを感じていた。

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前評判通り、沙緒里役の石原さとみの、人格が破綻する寸前といっていいくらいの壮絶な演技。
だけど、そこばかり注目すると「木を見て森を見ず」でしょう?と思いきや、結局は沙緒里の人物像がストーリーを振り回している印象。
これは監督と脚本も手掛けた吉田恵輔の前々作『空白』と同じで、そこでは古田新太演じる荒くれ親父が娘を亡くしてモンスターと化したのに似ている。
だけど『空白』では彼以外にも苦悩に苛まされる人たちが並走するように物語に厚みをもたらしていたけど、本作は蒸発事件に深く関わっている沙緒里の弟がかなり可哀想な立場になるくらいで、ちょっとばかり乏しいのが惜しいところ。

その中で、沙緒里と同じくらい重く考えさせられる存在なのが記者の砂田。彼は夫妻に誠実に接して、事実を固守すべき報道の使命を信じてるが、視聴者の関心度のギャップに葛藤も抱いている。演じる中村倫也の、じっと耐える抑制の効いた演技が石原さとみのそれと対を成すようで良かった。
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今も昔も頻々として起こっている子供の蒸発事件、暴走するネット世論、それに苛まされる当事者たち、メディアの偏向、という社会派的な眼差しも含ませながら、それをむやみにジャッジしたり教訓を訴えたりしない。
『空白』と同じく責めと赦し、そして悲傷からの再生という人間ドラマに徹した、まずまず良い映画でした。ただし少しばかり引けを取ってしまう、と余計な一言も付け加えておきます(笑)

フォト【予告編】https://youtu.be/YSxzyey7GGg?si=1snzGwjCKEcDdDVt
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