映画「愛と哀しみのボレロ」（午前十時の映画祭）

「午前十時の映画祭」にて。
わたしは３０年以上前、この映画をレンタルビデオで見たのだが、夫は４０年ぐらい前に、福岡のミニシアター「テアトル西新」（いわゆる再映館・いまはもうない）で見たそうだ。
上映時間３時間４分の長尺で、夫曰く「見終ったあと、人間関係がよくわからなかったので、そのまま次の上映も見て、２回続けて見ることになった。朝、映画館に行って、出たらそろそろ夕方になっていた」という思い出があるとか。

１９３６年から１９８０年までを縦断する物語。

１９３６年、ソ連・モスクワ。
バレリーナのタチアナ（リタ・ポールブールド）はプリマドンナのオーディションを受ける。
課題曲・ラヴェルの「ボレロ」に乗って踊るが、残念ながら落選。
失意の彼女にバレエの選考委員ボリス（ジョルジュ・ドン）が声をかけ、それがきっかけでふたりは結婚。

１９３７年、パリ。
にぎやかなバンド演奏がおこなわれている。楽団員のピアニスト・シモン（ロベール・オッセン）と、バイオリニストのアンヌ（ニコール・ガルシア）が結婚。やがて男の子が生まれた。

１９３８年、ベルリン。
カール（ダニエル・オルブリフスキ）は、有望な若き音楽家。ヒトラーに謁見し、賛辞を受ける。

１９３９年、ニューヨーク。
グレン（ジェームス・カーン）はジャズビッグバンドを率いている。第二次大戦がはじまり、自宅のご近所さんの息子二人もヨーロッパ戦線へ。しかしかれらは二人ともフランスで戦死。

１９４０年のパリはナチスドイツに占領されていた。シャンソン歌手の女性（エプリーヌ・ブイックス）は、ドイツ人将校相手に、バーで歌を歌っている。

第二次大戦はそれぞれの家族の運命を変えた。
タチアナの夫は地獄のような独ソ戦で戦死。息子のセルゲイ（ジョルジュ・ドン２役）もバレエダンサーとなった。

アンヌの一家はユダヤ人であったため、列車で強制収容所に送られる。このままでは確実に赤ん坊は死ぬと思い、アンヌはその子のおくるみにお金を忍ばせ、「戦争が終わるまでこの子を育ててください」とパリの住所を書いたメモと共に、停車した駅でひそかに赤ん坊を列車から降ろす。

シモンは収容所で死に、アンヌは奇跡的に生還。戦後、あの駅を何度も訪れるが、赤ん坊の消息は知れない。
実は赤ん坊を拾った男がお金だけ押領し、教会に預けていたのだった。その子はのちに成長して弁護士ロベール（ロベール・オッセン２役）となった。
しかし、生き別れのアンヌとは会えぬまま。

カールは世界的な指揮者となり、ニューヨーク公演を行う。
しかし、チケットは完売したにもかかわらず、開演直前でも座席はガラガラ。
音楽評論家二人だけが座るホールで演奏をやりとげるが、終演後、天井からはらはらと写真がばらまかれた。そこにはヒトラーと握手するカールの姿が。
カールの妻は「ユダヤ人団体が買い占めてたんだわ」とつぶやく。

グレンの娘・サラも戦後、有名なジャズ歌手となった。

シャンソン歌手は、「敵のドイツ兵と親密だった」ことで戦後、坊主頭にされ、さらし者にされる。田舎に帰るが、彼女の娘エディット（エブリーヌ・ブイックス２役）は成長したあとダンサーを夢見てパリへと向かう。
そのとき、アルジェリアからの帰還兵たちと列車でいっしょになる。その中にロベールもいた。
エディットは結局、TVリポーターの道を歩む。

セルゲイはボリショイバレエで有名なダンサーとなるが、自由を求めて西側に亡命。

長く息子の行方を探し続けていたアンヌ。年老いて認知症の症状が出て施設で暮らしていたが、消息を突き止めたロベールと再会を果たす。

１９８０年、パリでチャリティーコンサートが開かれ、セルゲイが「ボレロ」の音楽に乗って華麗に舞っていた。
寄付を呼び掛けるエディット。
熱唱する、グレンの娘・サラ。
そしてアンヌとロベールとは並んで客席に座っていた。

たしかに人間関係が一度見ただけだと分かりにくい(;´∀｀)。
わたしも３０数年ぶりに見て、途中でこんがらがり、あとでネット検索したりして関係を整理しました。

ただ、戦争を挟んで、歴史に翻弄される人間ドラマ、というわたしの一番好む映画ジャンルでありますね。

まったく別々の家族のお話が、最後にパリで結実し、集結して、ラストシーンにエッフェル塔が大写しになる。折しも今年はパリ五輪が開催。

「ボレロ」のエンドレスのように繰り返す円環のような旋律は、まさにこの映画にふさわしい。

ところで、この映画を見た「中洲大洋劇場」は、惜しくも今月末で閉館。８０年近い歴史があります。施設老朽化のためで、同じ場所にまたビルが建つようなのですが、映画館が入るかどうかは決まっていないとのこと。
（３月３日、中洲大洋）