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2023年12月22日17:23

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カサンドラ・クロス

 今年の「午前十時の映画祭」の最大の目玉(私にとっては)「カサンドラ・クロス」、観てまいりました。
 スクリーンでの対面は実に47年ぶり!
 いやー、それだけでもう、感動ですわな。

 しかしこれ、改めて観ると実にヤバいというか、先見性に満ちた作品ですね。
 アメリカが自国内でなく海外で極めて危険なウイルスの開発をやってるという設定を、70年代の半ばですでに作品世界に持ち込んでいると言うのには驚かされます(もっとも、そんな危険物を窓のある部屋で扱ってるというのはデタラメにも程がありますが)。
 また、列車という限定空間におけるウイルス性感染症の蔓延の様子をかなりしっかり描いている点もすごいです。喉の痛み、発熱、悪寒に始まり、重症化すれば肺炎を併発し、最後には昏睡して死に至るって・・・、私たちはこの4年の間に現実に見てきましたよね。
 フィクションとはいえ、そんな状況をまざまざと見せつけられると、コロナ禍の恐ろしさを改めて実感します。

 でも、ウイルスより恐ろしいのは「人間」の所業。
 本作の根底にあるのはナチズムの再来です。
 感染症に侵された乗客を乗せた大陸横断特急を封鎖・密閉して巨大な隔離室に仕立て上げる件り(しかも、その場所はあのニュルンベルグ)で見せつけられる光景は明らかにナチによるユダヤ人強制収容をイメージした絵作りになっており、背筋が寒くなります。
 そして、密封された列車の中に供給された酸素がエアダクトから出てくるシーンは明らかに、あのガス室を連想させるものになっています。
 本作が制作されたのは1976年。戦後31年です。ヨーロッパにはまだまだ戦争の傷跡が生々しく残り、人々の心にもその忌まわしい記憶がまざまざと残っている。だからこそこの作品は生み出されたんでしょうね。
 「カサンドラ・クロス」は娯楽性の強いサスペンス・アクションではありますが、上記のような要素が持ち込まれているため、決して明るいエンタメにはなっていません。これはやはりナチズムやそれに類したものが「身近でリアルな恐怖」をもたらす邪悪としてしっかり認識されているからでしょう。
 
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