ヴィム・ヴェンダース監督最新作。東京・渋谷周辺に点在する公衆トイレを美しく磨く中高年清掃員の日常。下町のアパートにひとり住む律儀な男・平山(役所広司)は、早朝まだ暗いうちから目を覚まし渋谷までクルマを運転。清掃が終わったあとそして休みの日さえも、変わることのないルーティンを繰り返していたのだった…。
お調子者の若き同僚タカシ(柄本時生)にイジられても感情を露わにせず寡黙な平山。なぜ彼はいまこの仕事に就いているのか、そして背負っている過去とは…観る側は気になるもしばらくのあいだは焦らされ続ける。よく似た状況から一昨年の「素晴らしき世界」を連想するが、今回は急にキレたりすることもなさそうだ。
ある存在の出現によって、平坦な日々を送る平山の感情にわずかながら変化が生じる。はたしてこの物語はここから舵を切るのだろうか…。この作品ではエグゼクティブ・プロデューサーも兼ねている役所広司、カンヌ国際映画祭にて男優賞の栄誉に輝いたことは、やや長めのラストカットをじっくり味わうだけで大いに納得。
単なるBGMとしてだけでなく、劇中の小道具としても機能しているのが音楽。あくまでヴェンダース好みというただし書きつきながら、それぞれの場面と歌詞世界をうまくリンクさせた選曲はお見事。音楽好きであれば、聴き慣れたこの曲がこんなに東京の街に合うのかという、しみじみした感覚を味わえる作品だと思います。
《【ことしの10本 2023】は外国映画・日本映画ともに年が明けてから発表しますのでよろしくお願いします》
ログインしてコメントを確認・投稿する