ようやく観ました「ゴジラ-1.0」。
色々不安はありましたが、まずは「よく頑張った!」と言いたいですね。
善戦してたと思います。
「あの戦争」とゴジラを直接結びつけるというのは正直言って衒いすぎというか荒技に近く、不安というより私には不快でしかありませんでした。が、卑怯未練に生き残ってしまった男の苦悩と再起の物語というのは嫌いではなく、そういうアプローチならば悪くはあるまい、と思い直しました。あのドラマパートに乗れなかった人はかなり多かったようですが、私には「概ね良好」でしたね。少なくとも「永遠の0」のようなベタついた「隠されていた美談」なんぞより遥かにマシでしたよ。
まあしかし、本作の眼目はなんと言っても人間による対ゴジラ戦。
武装解除され戦う術のない日本人が、ソ連に軍事的挑発と誤解されるのを恐れて傍観している占領軍の助けなしでいかに戦うか?
・・・なるほど、そう来たか、と思いましたね。
なんというか、非常に理にかなった作戦で、よく考えたなあと感心します。「シン・ゴジラ」の時も、ゴジラの血液を凝固させるという発想に膝を打ったものですが、今回のアイディアも見事。
佐藤直紀がアレンジした「ゴジラのテーマ」に乗って展開される「わだつみ作戦」の件りは気分が上がりましたね。旧作へのオマージュがあちこちに仕込まれた本作ですが、このクライマックスではなんと「太平洋奇跡の作戦 キスカ」でのスリリングな接触シーンの再現までやってる!
感動もんでしたよ。
あ、ついでに言いますと、中盤での特殊掃海艇・新生丸VSゴジラの件り(本編中の白眉!)は、約50年前の某大ヒット映画を彷彿とさせるものがありましたねえ。あれにも顔が綻んでしまいましたわ。
ただし、肝心のゴジラ東京上陸の件りには「?」をつけざるを得ません。
銀座でゴジラが猛威を振るうあたりは迫力満点なんですが、「上陸までの具体的なプロセス」が全くないんですよ。なんか、いつの間にか陸に上がって、いつの間にか街をぶっ壊してるって感じで、「いよいよ迫ってきた!」「ついに上がってきた!」という切迫感がゼロなんです。
ラジオの臨時ニュースの文言も変ですしね。唐突に「これは現実です!」なんて連呼したって、それまで情報をひた隠しにされてた側にとってはなんのことやらわからないでしょう。逃げ惑う民衆の描写にしても、眼前でいきなり展開される「理解が追いつかない状況」への戸惑いや思考停止が一切描かれず、とにかく猛ダッシュで逃げる姿ばかりが強調されるので、ちょっと気持ちが冷めました。
ここはもうちょっと、なんとかしてほしかったなあ。
俳優陣は皆さん概ね良かったです。
吉岡秀隆がいつもの吉岡秀隆でしかなかったのが若干引っかかりましたけど。
私が感心したのは新生丸艇長役の佐々木蔵之介。いかにも叩き上げの古参兵という感じを、よく出してたと思いますね。戦時中は何度も死線をくぐり、上官や部下の無惨な死を見たであろうけれど、来たる戦後をなんとか明るく生きようとする人物を好演してました。
そうそう、あの艇長、なかなか辛辣なセリフを吐いてましたね。
重巡・高雄が対ゴジラ戦に参加するまでの足止め役を担わされた上、使用する武器についてはその辺に浮いている機雷を使え、と通達されたことに対して、ひとこと。
「出たよ、『現地調達を追求せよ』。本当に変わってねえなこの国は!」
はい。変わりませんでした。平成になっても変わりませんでしたよ、艇長。
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