☆洋ちゃんの読観聴 No. 1619
伊予原新 「月まで三キロ」
６編が収められた短編集。僕はこの作家のことを
知らなかったが、本書を含め既に新潮文庫が５冊
出ている。
たまたま本屋で、ちょっと変わったタイトルだな
と思って購入した。これが期待以上の作品だった。
いずれの作品も、人生がうまくいかない人たちが
登場する。➀妻も仕事も失い自殺しようとする
中年男性、��結婚願望はあるが縁に恵まれない
アラフォー女性、��精神の病に悩む小学校生、
�げ閥箸粒�鉾屋を継いだものの生きがいを
見いだせない若者、�ナ譴鯔瓦�し父親が
レストランをやっている女の子と、常連客の
女性研究員、��専業主婦業に疲れた中高年女性、
らが登場する。
それぞれの登場人物が、人と出会い話をする
中で気持ちが変わり人生に前向きに取り組め
そうになってくる。それだけなら、よくある話なの
だが、この作品集には二つ味付けがある。
１つは、ミステリーではないが、ちょっと
した謎が各ストーリーにはあって、これが
うまく話を引き締めている。
もう1つは、そしてこれこそはこの作家の
“売り”だと思うのだが、ストーリーの中に
科学を織り込んでいること。➀では月と
地球の成り立ち、�△任論磴侶訃宗�
��はアンモナイト、�い任話狼紊砲�ける
気候の変遷、�イ倭芭鎧辧↓Δ浪仍海�
ついて平易な解説を登場人物がしてくれる。
僕なんかは典型的な文系人間で科学の話は
苦手なのだが、本書では実にわかりやすく
説明してくれる。こんな小説あったっけ？
それもそのはず、1972年生まれの著者は
東大大学院で地球惑星科学を専攻し博士
課程を修了している人だ。
この作家の別作品も読んでみたくなった。
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