☆洋ちゃんの読観聴 No. 1674
青崎有吾 「体育館の殺人」
ミステリーの若手・新人の登竜門としては
江戸川乱歩賞がある。これは広義のミステリー
作品が対象となる。これに次いで有名なのが
大藪春彦賞と鮎川哲也賞で、前者はハードボイルド&
冒険小説、後者は本格ミステリーが対象となる。
本書は2012年に第22回鮎川哲也賞を受賞した作品。
著者は1991年生まれで、この賞を受賞したときは
明治大学の学生だった。
高校の体育館で起こった殺人事件で、容疑者は
高校生、そして名探偵が登場するが彼も高校生だ。
ほぼ密室状態の体育館で放送部部長の男子生徒が
殺された。卓球部や演劇部、生徒会らの生徒が
体育館に出入りする中で、わずか15分間くらいの
隙に行われた犯行である。
警察の捜査が難航する中、高2の男子学生が
エラリー・クイーンばりの名推理を発揮する。
謎を解く伏せんやヒントがフェアに散りばめられて
おり、作品の完成度は高い。
登場人物のほぼ全員が高校生なので青春小説の
様相もなくはないが、本書は古典的推理小説と
言える。最近では珍しい最終章の前に読者に
対し犯人を当てるチャンスを与える「読者への
挑戦」が設定されており、本格派ファンには
たまらない。
その後、著者は、このデビュー作の舞台となった
高校における名探偵主人公のシリーズのほか
コンスタントに作品を発表しているようだ。
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