「1秒先の彼」〜京都の恋、京都慕情

何をするにもワンテンポ早いハジメ(岡田将生)と何をするにもワンテンポ遅いレイカ(清原果耶)、“消えた1日”をめぐってふたりの人生が交差する。2020年チェン・ユーシュン監督の台湾映画「1秒先の彼女」をリメイク。メインキャラの男女を入れ替え、物語の舞台を京都に移したラブコメディ。監督・山下敦弘、脚本・宮藤官九郎。

郵便局員ハジメは路上ミュージシャン桜子(福室莉音)に心を奪われアプローチ、引っ込みがちなカメラ女子レイカはただそれを遠まきにするだけ…。ハジメがばらまいた伏線をレイカが回収していく全体の構成、取ってつけたようなハジメの京都弁がやや鼻につくも、関西出身共演陣のリアリティと宮藤官九郎特有の笑いがそれをカバー。

オリジナルをイジるわけにはいかないと思うが、ハジメを軸としたレイカと桜子の三角関係、やがてその背景が少しずつ見えて興味津々となったところでぶった斬られた感があり残念。あとテンポがズレるふたりの特性を、終盤のファンタジーな展開そしてやや強引な謎解きにあまり活かしきっていないように思うけどどうだろうか。

初めのうちはあまりにも京都色を前面に押し出した演出にややクサさを感じたものの、やがてはこのいにしえの都こそこの物語にふさわしいのではという思いにも。おなじみの風景・街角がいくつも登場して何度となくニヤリ、ある昭和歌謡の名曲が流れ、ラジオから聞こえてきたDJの声には思わずグッときてしまいました。