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2022年11月18日17:00

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「ある男」〜なりすましの彼方には

平野啓一郎の小説を映画化、監督は「愚行録」「蜜蜂と遠雷」の石川慶。夫と離別、故郷に帰っていた里枝(安藤サクラ)は大祐(窪田正孝)と出会いやがて結婚、幸せな日々を送っていたが、ある事故により大祐は命を落とす。仏前に現れたのは長らく疎遠だったという彼の兄・恭一。遺影を見るなり、彼は大祐ではないと断言した…。

里枝から真相究明を依頼された弁護士・城戸(妻夫木聡)が満を持したかのように登場。大祐を名乗った“ある男”はいったい誰なのか…。ここから話はサスペンス調にカーブを切るも、単純な謎解きには終わらない。真実を追いかけるうち、城戸は自分自身の境遇を“ある男”に投影してしまい、彼の複雑な思いが物語全体を覆ってくる。

「あなたのような立場の人間がいちいち対象に自己投影していたら身体がもたない」と城戸の妻(真木よう子)は言う。その際の城戸の返答が予想外かつ非常に興味深く、それはそのまま印象的なラストシーンにつながっているように思う。たださまざまな解釈ができるこのエンディング、あまり深く考える必要はないとは思ったけど。

悲しみや怒りの感情を抑制して職務にまっとうする弁護士のすがたを妻夫木聡が好演、子役たちの振る舞いも素晴らしく、出番わずかながら眞島秀和が巧く演じた兄・恭一のイヤな感じも特記したい。現在の日本社会にたいする問題提起もいくつか織り込みつつ、とりあえずの一件落着感はあるものの、苦々しさも残る秀作だと思います。
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