認知症が進行する母・百合子(原田美枝子)と、その状況に正面から立ち向かう息子・泉(菅田将暉)。物語全体がかげりを帯び、ローテンションのまま長回しを駆使したシーンが続く。これは単に息子による母の救済物語かと思いきや…。映画プロデューサーや脚本家として知られる川村元気の初監督作品。彼が著した同名小説が原作。
ときおり百合子のイビツな意識・感覚が映像化、この効果は昨年の米映画「ファーザー」を思い出させるが、今回はそこに泉の回想場面や、物語の重要な鍵をにぎる百合子の過去場面も混じる。つまり原田美枝子は認知症が進行する高齢者だけでなく、さまざまな年齢の百合子を実に巧みに違和感なく熱演、まさにこれは主演女優賞もの。
レビューによると、観る側の多くが自身の問題としてとらえた様子。私の母は認知症を患うことなく逝ったけど、一緒にどこへ行ったとか、誰々と会ったとか、共通の思い出談義は生前限りなく交わした。ひょっとしたらあのとき私が脳内再生していた記憶の情景と母親のそれとはまったく違っていたのかも…そんなことを考えてしまった。
そして百合子がホームにお世話になる場面では、きっちりと父親の現況に思いを馳せたり…なかなか作品には没入できなかったことを正直に告白。なので物語のポイントとなるキーアイテムは見逃したような。ただ、”憶えていることも大切だけど、忘れることも大切”〜このフレーズがなによりも強く印象に残った作品でありました。
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