オハイオ州の片田舎、のんびりとした老人ホームでひっそり暮らすパット、かっての彼はセレブばかりを相手にした人気のヘアメイクドレッサーだった。そんなパットのもとにかっての最大顧客かつ友人女性の訃報、さらには彼に死化粧を依頼する旨の遺言が残されていた…。監督はトッド・スティーブンス、実現の人物をモデルにした物語。
ロードムービーの体ながら、実際のところは半径数キロ程度の田舎町で繰り広げられる物語。モードの先端を意識しつつも、地方の町特有のあけ抜けない色彩がユーモラスな感覚を引き出す。老人ホームにいるパットはただ頑固なジジイ、ところがいったん外の空気を吸うやゲイピープルの匂いを徐々に取り戻し、やがては“頑固なゲイ”に…。
この繊細かつ大胆なグラデーションを見事に演じきるパット役にはウド・キアー。正直あまりなじみのないベテラン男優だったけど、ラース・フォン・トリアー作品の常連とのこと。ヘアメイクドレッサーとしての力量がどういう形で披露されるかという興味が物語を引っ張っていくが、そこには予想以上の感動が待っていた。
会話をゆっくりと交わすことが多いせいか、老人あるいはゲイピープルが中心となる英米作品はセリフが聞き取りやすいなとふだんから思っていたけど、そのふたつの要素が重なるのだから言葉のやりとりが実に明瞭、米語の慣用句もふんだんに味わえ、こちらのヒアリング能力が向上したのかと思わず錯覚してしまう作品でもありました。
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