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2022年07月11日11:44

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1550

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1550        

白蔵盈太 「あの日、松の廊下で」         

忠臣蔵(赤穂浪士)の物語は、江戸城松の廊下で
浅野内匠頭が吉良上野介を斬りつけることから
始まる。徳川幕府の中心地での蛮行ということで、
内匠頭は切腹を申しつけられる。だが、喧嘩両成敗の
ルールから外れ、上野介に対しては何のお咎めも
なかった。赤穂藩は廃絶となるが、藩士だった浪士は
上野介家に討ち入り上野介を殺し、恨みをはらす、
というお馴染みの話。

本作品では、松の廊下の斬りつけの3カ月前から
斬りつけまでの間をドキュメンタリー風に著わされて
いる。主人公は、吉良と内匠頭と共に仕事をした
梶川与惣兵衛。内匠頭が吉良を斬りつけた際に
後ろから羽交い絞めにして止めた男だ。

この事件はどういうときだったのか。
将軍家は毎年正月に京の天皇へ年賀挨拶の使者を
送るならわしがあるが、これに対して天皇側は
返礼の使者を送る。この使者を歓待する儀式が
行われる。この使者を接待する勅使饗応役に
任命されたのが浅野内匠頭だった。そして饗応役を
指導するのが上野介だった。朝廷に関わる儀式は
武家のものとは異なり難しいらしい。長年、
京と江戸を往復し天皇家との連絡をしてきた
上野介以外に饗応役を指導できる人物はいなかった
ようだ。

この指導役は高家というもので、吉良上野介以外
にも二人いたが、いずれも経験も能力も不足して
いた。天皇家との調整のため上野介は江戸を
離れ京へ出張となる。だが、後の二人の指導役は
内匠頭を十分指導できなかった。大事な儀式の
準備が遅れに遅れ、上野介も二人の高家および
内匠頭への不信が募るが、上野介と内匠頭に
仕える梶川与惣兵衛は気が気でない。なんとか
上野介と内匠頭には仲良く無事に役目を務めて
もらいたいと必死であった。

一般に忠臣蔵においては吉良上野介が悪者と
いう扱いだ。少数派だが、上野介は立派な
人物で内匠頭は人間ができていないという
説もある。

本書では、上野介も内匠頭も優秀で回りからの
信頼厚い人物とされている。では何故事件は
起こってしまったのか。簡単に言えば、
いろいろなボタンの掛け違いということに
なろうか。

誰もが知っている話の一部分を取り上げ
掘り下げた、なかなかの作品だと思う。
本書は著者のまだ2作目で、歴史小説は
初めて。今後に期待したい。


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