少子高齢化が一段と進んだ近未来の日本、75歳以上の国民には自ら生死の選択権を与える制度「PLAN 75」の導入が国会にて可決。ホテルの客室清掃員として働くひとり暮らしの角谷ミチ(倍賞千恵子)78歳は、ためらいつつも制度申請に気持ちが傾く。監督は初の長編作品に挑んだ早川千絵。カンヌ映画祭にて新人特別表彰。
いきなり奈落の底に落とされるような幕開け、重苦しい気持ちを抱えたまま物語は進む。行政担当者やコールセンター職員、フィリピン人ケアワーカーなど脇の存在はあるものの、けっして感情的にならず謙虚な女性ミチがあくまでも中心。実年齢まもなく80歳の倍賞千恵子も老いに抗うことなくありのままのをさらけ出している。
いわゆる余白部分が多く説明不足かと思える箇所もいくつか見られるが、観る側の想像力を喚起する映画的表現という意味では十分に合格。物語収束の運びかたにやや脇の甘さを感じるものの、とにかく日常目をそらしてしまうシリアスな問題を、いきなり目の前に突きつけられた苦く重たい感触は、いつまでも心のなかから離れなかった。
なんばパークスシネマ・シアター3の118席はほぼ満席ほぼ高齢者で独占。上映後場内が明るくなると自然と重苦しい空気が漂い、隣席のじいさんは「こりゃ年寄りに見せる映画ちゃうな」とつぶやいた。たしかにまず観るべきはこの国の為政者、さらに若年層に見せることによって今度の参院選投票率アップに貢献するかもしれない。
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