大学にて哲学を教える42歳の小鳥遊雄司(長谷川博己)。何事にも意味づけをしてから行動、すべてにおいて理屈が先行する彼は、泳ぐことはおろか水面に顔をつけることすらできない極度の“水”恐怖症。ある日興味半分でスイミングスクールをのぞいた彼、そこには静香先生(綾瀬はるか)による強引な勧誘が待っていた…。
高橋秀実の同名体験エッセイが原作。指導する静香先生の言葉のなかに、著書からの引用がときおり混ざるものの、基本的にはまったく別モンの創作(渡辺謙作監督による脚本)。水かきひとつにも意味づけてしまう雄司だが、水泳の楽しさ、素晴らしさを語る静香先生の表現のなかにも、よくよく聞けばけっこう深いことを含んでいるような。
生徒たちと美貌の先生という設定、なにやらかっての周防正行監督「Shall We ダンス?」が思い浮かぶが、今回は技術向上や目標達成といった前向きな側面よりも、過去にさかのぼりつつうつろう雄司の心象風景に比重を置いているような印象。水泳にたとえればまさに背泳ぎ、後ろ向きになりながらも前に進んでいるといった具合だ。
なので先行しているこの作品のイメージほどユーモラスな感覚や爽快感にあふれることは少なく、観る側はむしろ雄司に内在する感情に向き合い、じっくり寄り添っていく重めの展開。ただ彼が背負ってきた過去を思うと、水泳教室入会の決意がやや弱かったのではないかと、もう一度序盤部分を確認したい気持ちにもなりました。
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