米アカデミー外国語映画賞を過去2度獲得、イランの名匠アスガー・ファルハディ監督最新作。ちょっとした美談を大きく取り上げて当事者を一気に英雄視しておきながら、やがて空気が反転するやこんどはバッシングの集中砲火…現代SNS社会のありようにメス。後半にはサスペンスの要素も多少顔を出すヒューマンドラマ。
借金の罪で服役中のラヒム、つかのまの休暇期間で塀の外へ出てきた彼に、婚約者は偶然大量の金貨を拾ったと言う。換金すれば借金は返済、出所も可能。ところが彼は金貨を落とし主に返すことを決意、この善意がメディアの知るところとなり彼は一躍市井のヒーローに。ところがある噂を書きこんだSNSが発端となり状況は反転…。
ラヒムはタイトル(英題A Hero)ほどの意志の強さはない。どことなく煮え切らない部分もあり、その場しのぎに口から出まかせも。そう、その出まかせがあとあと自分に跳ねかえってくるという物語。他者を糾弾する際に選ぶ言葉、あるいは窮地に追いこまれたときの言い訳、字幕に頼るだけながらイラン風の論理の組み立てが興味深い。
SNS社会がテーマとはいえ、そこは人間同士の言葉のやりとりを重視するファルハディ監督、欧米日作品のように露骨にスマホの書き込みを映したりはしない。ラヒムをはじめ、周辺の人間は思い思いに言いたいことを口にするが、結局は誰しも自分が一番可愛く、保身に回っているだけちゃうのと、人間の哀しさも感じた作品でした。
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