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2022年02月21日19:09

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計略は”ストーリー“次第 ( 映画『オペレーション・ミンスミート– ナチを欺いた死体』〉

いかにも英国映画らしい、手堅い仕上がりの良品歴史サスペンス。

第二次世界大戦の転換点である、1943年の米英連合軍によるシチリア島上陸作戦。
それに際し、待ち受ける独伊軍の「気を逸らす」ための謀略工作が企図された。
それは、来る上陸はシチリアではなくギリシャだという重要文書を持った士官に“扮した”死体を海に放ち、その文書をドイツ側に“見せる”。
見え透いた計略だと思われそうだが、これが実は大きな成功を収めることができた。という事実を基にしたもの。

これは長らく秘密にされ、ようやく公開されたのは90年代後半。
おそらく、途端に大きな話題を呼んだのだろう。戦史マニアの端くれである自分もどこかの本で知った覚えがある。

「工作」はふたりの士官によって企画された。そのひとりモンタギュー少佐を演じたコリン・ファース。
もちろん誰もが知る名優。軍服を着せれば彼ほど様になる俳優も居ないんじゃないか、とあらためて思うくらいのダンディさ。
相棒のチャムリー大尉演じるマシュー・マクファディンが「メガネ君」っぽいキャラだから、この組み合わせの妙が良い。しかもふたりは海軍と空軍で制服も違うから余計に映えている。
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前半の見せ場は何といっても、士官役の死体を探し、彼に「ストーリー(設定)という命」を吹き込むところだ。
それは、偽物と疑われたないように完璧な“擬装”を施すためだ。官姓名などの身元だけではない。“彼”の人格や人生までも創り上げようとする手のこみよう。
これをモンタギューとチャムリーだけでなく、もうふたりの女性スタッフふたりがチームとなって嬉々として取り掛かるのが面白い。そもそも女性スタッフのひとりであるジーンが加入したきっかけが「死体士官のポケットに入れる恋人の写真を探している」というモンタギューの申し出がきっかけだったのだから。
そのジーン演じるケリー・マクドナルドも、英国女性らしい気品を湛えた好演。
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後半からいよいよ「本番」へ向かって紆余曲折のスリリングな展開。しかしそこにモンタギューの身辺を巡るふたつの波風がストーリーを揺さぶっていく。これは何かはネタバレなので伏せるけど歴史サスペンスにパーソネルな人間ドラマとしての厚みが出ているなかなかの観ごたえ。

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狂言廻しのような役柄で、「007」を生んだ後の作家イアン・フレミング“少佐”が脇に立つ。
計略/謀略そのものが手の込んだ「ストーリー」だ、というのを彼の存在から物語らせるのもなかなか心憎いものがありました。何しろ“元締め”たる諜報部「Mi5」のボスがどう渾名されてたかに思わずニヤリ、ですから。

フォト【予告編】https://youtu.be/4_aiciu6D0I

なお、「ミンスミート」というのは、お肉のパイの一種だそうだ。本来は「トラウト(魚)」という作戦名だったのだけど、チャーチルは魚嫌いなので変更されたと。ホントかよ?(笑)

〈TOHOシネマで公開中〉

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